信心深い者
@Ethyrene
信心深い者
おお、神よ、貴方は私を見捨てたのか。
貴方の敷いた十戒を、確かに私は破ってしまった。罪のない人を殺めてしまった。しかし、それは貴方の名を知られてしまったが故。貴方の尊い御名はみだりに知られてはならない。それは貴方の敷いた十戒で最も守られるべき戒律。
私は祭壇に祈りを捧げる。かの神の許しを得るために。かの神が好む血の滴る肉と、かの神の御座すとされる宙のように美しきラピスラズリを供物として添えて。
周りの者どもは私を指して狂っているとのたまうが、かの神に見放されてしまうほうが狂ってしまうだろう。それほどに私はかの神を敬愛しているのだ。それほどに私はかの神を信仰しているのだ。
愚か者どもはかの神を烏賊だの蛸だのと愚弄するのだろうが、私に言わせればかの神はこの世のものとは思えないほど美しい。
他人に何を言われようとも、私はかの神を信仰することを止めないだろう。私は祈りを捧げることを止めないだろう。それこそ、この身体が朽ち果てるまで。いや、朽ち果てても止めないのかもしれない。
どれだけ祈りを捧げていただろうか。もはや餓死するかといったところで、かの神が私の目の前に降臨された。果たしてそれは私の幻覚なのだろうか。今際の際の狂気が見せる幻なのだろうか。幻だったとしても、かの神が私などのために動いてくださったということに私は震える。これほどの歓喜は後にも先にも今この瞬間だけだろう。
おお、神よ。貴方は私を許すと仰るのか。おお、おお……そのお慈悲に感謝いたします。
おお、神よ。ならば私は今すぐ貴方の元へと向かいましょう。
信心深い者 @Ethyrene
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます