戸締りは必ずしましょう。
@garana0611
確か18時48分
一人暮らしを始めて半年は、経っていたはず。そんな頃の話。
その日は仕事帰りにスーパーに寄ったから、帰りはいつもより少し遅かった。
いつものように家の鍵を用意しながらドアノブに近付くと、ドアがほんの少し開いていた。
実家の頃から私はよく鍵をかけ忘れた。
あぁ、やっちまった。と思いながらドアを開けてカサを玄関に放り出し、靴を脱いでカギを閉め。
居間に入ると見ず知らずの男がいた。
第一印象は、自分より若そう。
帰宅して自分の家に知らない人間が居たら、悲鳴を上げるべきなんだろうが、そのテの常識がどうにも乏しい、というかそんな高音出ないんじゃないかな。
驚いて固まる彼と目も合わせず、とにかくベッドサイドで着替えた。(何よりも制服が煩わしい)
この子は誰なんだろう。
なぜウチにいるのか。
色々考えてはみたが時間も時間で、仕事終わり、お腹がすいていたのでなんかもうどうでもいい。
居間に戻ってすぐ味噌汁をコンロにのせ、炊飯器を見たら1杯では余るが2杯だと微妙なごはんが余っていたので
「飯食ってくか?とりあえず靴を玄関に置いてきてくれ。」
ストーブとイスの陰に移動した彼に言った。
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レバー煮とごはん、味噌汁を並べた頃
彼は怯えていた。
「食べないの?血が増えるんだぞ。」
彼「なんで通報しないんですか。驚かないんですか。」
「こんなに驚いてるだろうが。」
彼「すみません、出来心で、盗みに入ろうとかはなくて・・・・・・」
彼は近くの大学に通う学生らしい。
授業を終えてバイトに行ったら勤務怠慢にやってもいない廃棄食品の横領も加わってクビを言い渡され打ちひしがれながら徘徊しているうちに住宅街に入ってしまった。
たまたま愛車?の緑のフレームの自転車が目に付き、近付いたら家のドアが少し開いている(せめて閉めて出勤しろよ)
好奇心とヤケクソと、すぐに出れば問題ないと思って侵入したところ、間発入れずに私が帰宅した、ということらしい。
そんな話延々とされても知らんがな・・・
話し終わるとなお謝りながら泣いている。
「次のバイト先決まったのか?」
彼「決まってません、て、一番気になるとこそこです・・・?」
「いや、4条のファミマが人足りないらしくてな、〇〇大なら近い距離ではないが行けるなら行ったら喜ぶぞアレ。」
彼「自分でやっといてなんですけど今の状況もよくわからないですけど、ありがとうございます・・・」
「まぁ、飯食ったら帰って履歴書書きな。」
彼「オレ、レバーあんま好きくなくて・・・」
「ぶっ殺すぞ」
彼「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
なんだかんだ彼が帰ったのは20時半をまわっていた。(洗い物をさせた為)
彼「なんで見ず知らずの侵入者に優しくしてくれるんですか」
「優しくはしてないだろう。何か知らんが居るのに1人で食うのも気まずいし食うんだったら働いて(洗い物して)いけ。」
彼「ちょっと意味わかんないっす・・・世の中こんな変な人もいるんすね。常に錯乱してるんすか?」
「ぶっ殺すぞ。とりあえず暗いから気をつけろ。他人の家には勝手に入るな。わかったな?」
彼「本当にすみませんでした。」
「二度と来るんじゃねーぞ。」
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それ以来彼と会ったことは無いようだ。
というか彼女の家と〇〇大学やファミマ自体遠いから彼がファミマにいようと関係ないんだろう。
自分ちで見ず知らずの他人と食卓を共にする神経が理解できないが。
「達者にやってんだろうなぁ。」
人と少しズレている彼女がJack Daniel'sをロックで煽りながら、鼻で笑った。
そんな話。
戸締りは必ずしましょう。 @garana0611
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