6話目

「あ……」

僕が家に帰ると玄関の前に一人の見覚えのある女性が立っていた。

「誠……」

「何しに来たわけ……美香」

玄関の前に立っていたのは浮気した彼女だった。

「その……誠に謝りたくて……」

「謝る?なにを?」

「……浮気したこと……」

「あー自覚あったわけ?話だけでもしようと思ったら警察呼ぼうとしてたくせに?」

僕は強烈な吐き気を覚えながら作り笑いで会話をこなす。

「あんだけ、こっちに浮気するな浮気するな言っときながら結局自分が浮気してたら世話ないよな?」

この言葉を発しているのが自分の意志なのか分からなくなっていく。

「……もう帰って」

これ以上会話していると自分の中で溜まっている怒りが爆発しそうになる。

玄関の鍵を開け部屋に入り、彼女の顔を見ないで鍵とチェーンを掛ける。

「勘弁してくれ……」

張っていた糸が切れたかのように抑えていた吐き気が襲ってくる。僕は耐え切れず風呂場で逆流してくる胃液を吐きだす。ツンとした臭いが鼻を刺すがそんなもの関係なしに胃液は逆流を続ける。口からはやがて何も吐き出せなくなっていたが身体はまだ何か吐き出そうとしている。身体に痛みが現れ、そろそろ死ぬんじゃないかなと思った頃に身体はようやく何かを吐きだそうとするのをやめた。

「あー……死ぬかと思った……」

僕は浴槽を洗い流すついでに汚れたところを洗い流す。吐ききったところでなにかスッキリするわけじゃない。むしろ気持ち悪さが増しただけだった。

「ホント……腹切り裂かれて、臓物ぐちゃぐちゃにされてるような感じだ……」

僕は布団に倒れこみまた少しの睡魔に身をゆだねた。

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