5話目

「いらっしゃいませー、新商品揚げたてですご一緒にいかがでしょうかー」

バイト先に着き店内に入ると同じシフトに入ることが多い川田さんが入口の方を見ながらそう言っていた。

「あれ、誠さん今日は沢山くるね?」

「?何言ってんすかー、今日1回目ですよ?」

僕がそう言うと川田さんは首を傾げる。

「あれー?そうでしたっけ?」

「だって俺最近あれがあってからあんま食欲無くなりましたもん」

と僕が言うと川田さんは心配そうな顔をした。あれ、とは要するに彼女が浮気した件だ。

「あー……あれから大丈夫?」

「大丈夫ですよー、それよりも、川田さんレジ」

「え、あ!いらっしゃいませー!」

川田さんがお客さん対応をしに行った所で僕は店内を見て回る。カップ麺、スナック菓子、おにぎり、弁当、在庫はどれもあるが胃が案外これが欲しいと求めるものはないものだ。スナック菓子の棚の前でしゃがんでると横から声が聞こえた。

「あれ?誠、お前なにやってんの?」

「あー、オーナーお疲れ様でーす」

「おう、お前暇人か」

「ひっどいなー、確かにそうだけども」

僕はオーナーといつもやってるようなやり取りをする。

「あ、そう言えばお前一昨日シフト入ってたよな?」

「?はい、まぁ一応」

「裏に届いたボトルコーヒーお前が発注した?」

「あー、そうですねぇ」

「お前二箱もどうするんだよ……」

オーナーは明らかにお前やらかしたなって顔をする。

「全部俺が飲むんですよー」

「まだそんな生活してんのかー?」

オーナーも彼女が浮気したことを知ってる1人だ。そしてあんまり褒められた食生活をしてないのも知っている。

「まぁまぁ、だってねぇ?」

「まぁ、いいや、程々にしとけよ?」

「うぃーす」

オーナーが事務所に入ったのを確認してからまた店内を見回って結局新商品のエナジードリンクだけを手に取ってレジに向かう。

「川田さんお願いしまーす」

「あー、はい、お会計205円です。袋は?」

「あー、大丈夫です。ポイントでーお願いしまーす」

「はーい、これ美味しいの?」

「わかんないですよーまだ飲んでないんだからー。じゃお疲れ様でーす」

僕はそう言って店をあとにする。川田さんの方を見るとお疲れ様とは言いながらもなんか疑問があるように首を傾げていた。

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