3話目

 僕は久しぶりに夢を見た。なにか特別な夢というわけではない。かと言って特徴がないわけではない。どこか懐かしさを覚えるような夢だ。

『あんたなんか産まれてこなければよかったのに』

『お前みたいなやつがなんで生きてるの』

『さっさと死ねよ』

親やクラスメイトから言われた言葉の数々が夢の中で響く

「なんでこんなこと言われたんだっけな……あー……いや……どうせ俺みたいなのが生きてるからだって言われるんだろうな……」

今まで生きてきた中で言われてきた多くの言葉その中に自分を認めてくれる言葉なんて一つもなかった。誰も僕を認めてくれない。僕を唯一肯定してくれていた彼女はいつの間にか他の男と浮気をして、その相手の元に行ってしまった。もう関わらないでと、メッセージを送ってきて、僕からの連絡を拒否したらしい。

「アハハ……ホントなんで生きてるんだろう……生きてていいことなんて一つもないのに……」

身体が沼に沈んでいくのが分かる。ただ、足掻く気力も出てこない。僕にはただ飲み込まれていくことしかできない。

『お前は必要のない存在だから、色んな人に捨てられるんだよ。お前はただ、自分が傷つきたくないから本心を隠しているだけなんだよ。そんなお前に存在価値なんてないんだからお前は生きていちゃいけないんだよ』

沼に完全に沈む直前夢の中で僕の声で、その言葉が響く。

全く持ってその通りだと思いながら。僕の身体は沼に完全に飲み込まれた。

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