第十二話「ロゼとイリナ」

 ◆


 訓練施設が完成してから数日が過ぎた。

 今日も俺は剣術の稽古を終え、今はアイエル様に生活魔術を教えている。 アイエル様もマナ操作を覚えた事もあり、今はイメージの具現化をメインに練習を行っている。

 俺がアイエル様のマナを使って見本を見せ、そのマナの流れとイメージを覚えてもらうのが何時もの流れだ。 それの繰り返しで、アイエル様も今では光、火、水、土魔術はできる様になった。 今は目に見えない風の魔術を教えている最中だ。

 アイエル様も俺に教わったせいで、当たり前の様に無詠唱で魔術を使えている。 やっぱり呪文を覚えるよりも、感覚で覚える方がアイエル様には向いていたんだと思う。

 あ、後さりげなくアリシア様も無詠唱魔術をマスターしてた。

 今はメラお姉ちゃんに呼ばれ、ここには居ないけど…

 そんな事を考えて居ると、アイエル様が周囲を見渡し、不安そうに俺に質問してくる。


「ねー ロゼ。 ママおそいね…」

「そうですね。 メラお姉ちゃんに呼ばれて行ってから結構時間が経ちますね」


 俺は穏やかにそう答える。

 ちょっと前までのアイエル様なら俺と二人っきりと言うか、アリシア様の側を離れようとはしなかっただろう。 そう言った点でも、アイエル様も日々成長されているんだと実感する。


「安心してください、きっとお話しが長引いているだけだと思います。 さぁ、アリシアさまが戻られる前に風魔術をマスターして、アリシア様を驚かせましょう」


 そう言って、安心させる様に微笑みかける。


「うん、わかった。 きっとママをおどろかせる!」


 言ってニコやかに笑い、真剣な表情で魔術の練習を続ける。

 それから暫くして、メラお姉ちゃんが俺たちを呼びにきた。


「ロゼくーん。 アイエル様も旦那様がお呼びですよー」


 俺たちは魔術の練習の手を止め、メラお姉ちゃんに聞き返す。


「ぼくたちもですか?」

「ええ、魔術師の先生が到着されたの」

「本当に?!」


 俺は思わず聞き返してしまった。


「ええ、二人を紹介するから連れてくる様に言われたの」

「わかりました。 アイエルさま、先生が到着された見たいです。 ご挨拶に伺いましょうか」

「せんせい?」

「はい。 ぼくたちに魔術を教えてくれる先生です」


 俺はそう笑顔で答えるとアイエル様の手を引いて、メラお姉ちゃんの案内の元、応接室へ向かった。


 ◆


――コンコン――


 メラお姉ちゃんが応接室の扉をノックし、中からカイサル様が「入れ」と返事を返す。


「失礼いたします。 アイエル様とロゼ様をお連れ致しました」


 そう言って一礼すると扉の脇に控え、俺とアイエル様を中へ通す。

 アイエル様は俺に手を引かれて応接室に入ると、見知らぬ人物が居たせいか俺の陰に隠れてしまう。

 応接室に居たのは、カイサル様を始め、アリシア様、父様、母様の他に、長い金髪の髪を纏めた、白いローブを身に纏った女性。

 おそらくこの女性が、俺たちの家庭教師を引き受けてくれた魔術師の先生だろう。

 そう状況を把握していると、カイサル様が俺たちを紹介する。


「イリナくん、紹介しよう。 娘のアイエルと、バルトの息子のロゼだ。 先ほど説明した通り、この子達に魔術を教えてもらうのが君の仕事となる」


 カイサル様に紹介され、俺は一礼する。


「はじめまして、ロゼ・セバスです。 そしてこちらがアイエルお嬢さまです」


 そう言って、相変わらず俺の陰に隠れて、魔術師の先生を凝視するアイエル様に挨拶を促す。


「ほら、アイエルさま。 しっかりご挨拶しましょう」


 俺に促されて、アイエル様はしぶしぶ答える。


「アイエル… です」

「ロゼ、アイエル、紹介しよう。 これから君たちに魔術を教えてくれる、家庭教師のイリナ先生だ。

 ちゃんと言う事を聞く様に」


「イリナ・シスタールです。 これから宜しくね。 アイエルちゃん、ロゼくん」


 イリナ先生は俺たちの元へ歩みよると、腰を落として視線の高さを合わせ、そう挨拶する。


「よろしくお願いします。 イリナ先生」


 俺は期待の眼差しで挨拶をし、アイエル様は俺に隠れたまま「コクリ」と頷く。

 その様子を見守っていたカイサル様が話に割って入る。


「イリナくん、今日は長旅で疲れたでしょう。 今日は時間も時間ですし、魔術の授業は明日からにしてゆっくりと休んでくだされ」

「お心遣い、ありがとう御座います」

「メラ、イリナくんを客間へ案内してやってくれ」

「畏まりました」


 メラお姉ちゃんは一礼すると、イリナ先生に「ご案内します。 イリナ様」と頭を下げる。

 イリナ先生はメラお姉ちゃんに連れられ、応接室を出て行く。

 そして、緊張の糸が解けたのか、アイエル様はアリシア様の元へ駆け寄り抱きついた。 アリシア様は、そんなアイエル様の様子に「あらあら」と微笑み、頭を撫でてあげる。


「ロゼくん。 私が居ない間、アイエルの事見ててくれてありがとうね」

「いえ、魔術の勉強に必死でしたから」


 そう言って苦笑う。


「アイエル。 明日からはロゼくんと一緒に、イリナ先生の言う事をちゃんと聞いて、しっかり勉強するのよ」


 アリシア様はアイエル様に言い聞かせる様に、優しく手で撫でながらそう言う。

 アイエル様は理解しているのかどうか怪しい感じで、首を傾げながら「うん」と頷いた。


 ◆


 翌朝、俺とアイエル様、そしてイリナ先生は訓練施設に集合した。

 最初の授業と言う事で、今日はカイサル様を始め、アリシア様、父様と母様とお爺様、それからメラお姉ちゃんまで見学に来ている。


「今日はよろしくお願いします。イリナ先生!」


 俺は開口一番、イリナ先生に頭を下げて挨拶をする。

 そんな俺の様子を見て、アイエル様も恐る恐る「よろしくおねがいします」と言って頭を下げた。


「二人とも今日から宜しくね」


 イリナ先生もそう言って微笑んだ。


「では、イリナくん。 さっそくで悪いんですが、訓練施設の防壁に結界魔術を付与して頂けますか」

「分かりました」


 カイサル様に言われてイリナ先生は頷き、懐から魔石を取り出すとそれを防壁に翳す。

 そして、膨大なマナを集め、呪文の詠唱を始める。


「時空を司りし光と闇の精霊よ、万物を害す遍く害意を退ける盾の加護を授けたまえ。 アンチ・ブレイク!」


 詠唱の完了と共に、膨大な魔力が魔石に流れ込み、防壁の中へと魔石が消えていく。

 防壁は淡く輝くと、その光を次第に無くし、元に戻る。


「これで防壁に魔術の付与が完了しました。 上級魔術で付与したので、大抵の攻撃は弾いてくれると思います」


 イリナ先生は魔術の付与を終え、そう説明する。


「流石宮廷魔術師の娘さんだ。 上級魔術も扱えるとは見事だな」

「いえ、私などまだまだです」


 カイサル様に褒められて、イリナ先生は謙遜する。

 俺は使用した魔術が気になって、イリナ先生に質問してみた。


「イリナ先生! さっきの魔術はどう言った魔術なんですか?」


 目を輝かせて質問する俺にに、イリナ先生は表情を崩して説明する。


「今使ったのは光と闇の混合魔術なの。 まだロゼくんには理解するのは難しいと思うけど、空間その物を遮断する事ができる防御魔術って言えばいいかしらね。 それを魔石を使う事で、永続的に発動し続ける事ができる様にしたのがさっきの術式ね」

「魔石を使うと、永続的に発動する事ができるのですか?」

「魔石には周囲のマナを集める性質があって、それを利用して永続的に魔術を発動させているの。 魔石は魔物から取れるんだけど、それは魔物がマナを吸収して生きてるからに他ならないの。

 より強力な魔物は、それだけ多くのマナを集めてるって訳。 だからドラゴンとか長寿な魔物はそれだけで強力になるし、マナを利用した攻撃も、威力が跳ね上がるの」


 イリナ先生の説明を受け、俺は大雑把に魔石がどう言ったモノか理解した。

 要は、魔物の中にはマナタンクの役割をする魔石があって、そのマナタンクは前世で言う所の、充電も放電もできる便利な電池と例えたら、分かりやすいかもしれない。

 それで、その電池の容量は、その魔物の強さによってその容量が違うって所かな。


「なるほど、つまり多くのマナを集めた魔物の魔石を使えば、それだけマナの消費が激しい魔術も、使える様になると言う事ですね」


 俺がそう簡素に説明すると、イリナ先生は驚いた表情で言葉を返す。


「話には聞いて居たけどすごいわね、ロゼくんは今の説明でだいたい理解できたのかしら?」

「はい。 魔石を使えば、マナの総量が少ない人にも、その人の保有するマナ以上の魔術を使えたり、魔道具とかにも応用できるって事ですよね?

 それを利用してイリナ先生は、防壁を魔道具化したって事であってますよね?」

「驚いたわ、カイサル様の言う通り、三歳とは思えない程理解力があるわね」


 その言葉に、カイサル様はニヤリと意味深に笑い、イリナ先生に忠告する。


「イリナくん。 その程度で驚いていたら身が持たないぞ。 ロゼは常識では測れないからな」


 ちょっとカイサル様、それはどう言う意味ですか?

 俺は心の中でそう思ったが口にはしない…

 イリナ先生はカイサル様の忠告の意味を、少し考えるも答えが出ず、そう言う物と受け取ったのだろう、話を続ける。


「まぁ、いいわ。 これだけ優秀なんですもの、私がしっかりと教えて行くわ」


 俺は改めてイリナ先生に頭を下げる。


「ご指導よろしくお願いします」

「それじゃ二人の今の実力を見てみたいわ。 的を用意するから、それに今できる魔術を使ってもらえるかしら」

「分かりました。 アイエルさま、練習の成果を見せる時ですよ」


 俺は横で様子を伺っているアイエル様に笑いかけ、そう言ってやる気を促す。

 俺にそう言われ、アイエル様は相変わらず「うん…」と頷くのみ。 相変わらず馴れない人には人見知りを全力発揮するアイエル様。 心の中で(なんとかしてあげたいな…)と俺は思う。

 そして、イリナ先生が木で出来た的の設置を終えて戻ってくる。


「さぁ、始めましょうか。 どっちが先に見せてもらえるのかしら?」

「アイエルさま、折角ですのでアイエルさまからやってみましょう。 ぼくもアイエルさまの魔術が見てみたいです」


 俺はそう笑いかけてアイエル様に促す。

 俺がアイエル様の魔術を見てみたいと言ったからか、意を決してコクリと頷くと的の前に歩み出る。


「アイエルちゃんからですね、気負わず自信を持って魔術を見せてください」


 イリナ先生も、気負わない様にと笑顔で魔術を促す。

 アイエル様は深呼吸すると、マナを操作し、練り上げて覚えたての水の生活魔術をで発動させる。

 そして、それを思いっきり的めがけて投げつけた。


「えいっ!」


 水球はしっかりとイメージ通りに的に当たり、はじけて消える。


「流石、アイエルさまです」


 俺は言ってアイエル様を褒め称える。

 アイエル様は照れくさそうもじもじしているので、近づいて頭を撫でてあげる。

 アイエル様は嬉しいのか気持ちよさそうに目を細めた。

 そんな俺たちを他所に、イリナ先生は固まって何やら一人ブツブツと呟いている。


「そんな… まさかあり得ないわ、無詠唱だなんて…

 いえ、そんなはずは無いわ、詠唱を聞き逃してしまった? この私が?…」


 俺はそんなイリナ先生を現実に引き戻すべく声を掛ける。


「イリナ先生。 アイエルさまの無詠唱魔術はどうでしたか?」


 念のため、無詠唱を強調する事にした。


「無詠唱… やっぱり無詠唱だったのね… アイエルちゃんの魔術の才能はなかなかのモノですね。 その年で無詠唱で魔術を扱えるなんて」


 そう言ったイリナ先生に、アリシア様が話に割って入る。


「イリナ、アイエルの無詠唱魔術はロゼくんが教えたのよ。 私もつい最近使える様になったわ」


 アリシア様は言って嬉しそうに微笑む。

 その言葉を聞いてイリナ先生は驚愕した。 アイエル様だけでなく、アリシア様も無詠唱魔術を使えると言ったのだ。 しかも、それを教えたのが俺だと言っている。 イリナ先生の視線が俺で止まり、「信じられない」と顔に書いてあった。


「私の先生としての立場が…」


 イリナ先生はボソリと呟いた。

 あ、これはダメだ。 先生としての何かを砕いてしまったかもしれない…

 俺はすかさずフォローする事にする。


「イリナ先生もコツさえ掴めれば簡単に無詠唱魔術ができると思いますよ。 だって、アイエルさまもアリシアさまも出来たんですから」

「無詠唱魔術にコツがあるの?」


 俺の言葉に、イリナ先生は復活して食いついてきた。


「はい。 一度慣れると誰でもできますよ。 それよりも僕は、イリナ先生に中級魔術や上級魔術や、他に役に立ちそうな魔術をいっぱい教えて欲しいです!」


 期待の目を向けて、イリナ先生をおだてる。


「ええ、それは任せておいて!

 それよりも私にもそのコツを教えてくれる?」


 中級魔術や上級魔術を教えて欲しいと言われた事で自信を取り戻したのか、ちゃっかり無詠唱魔術のコツも聞いてきた。


「はい!勿論です。 イリナ先生こそ色々教えてくださいね」

「分かってるわ」


 なんか変な友情が芽生えた気がする…


「それじゃ、ロゼくん。 今度は貴方の実力を見せてね」

「はい!」


 俺はこの時、新しい魔術が習えると言う事でテンションが上がっていた。

 上がって居たが為にとんでもないミスをしてしまった。


「では行きます!」


 今、俺が使える魔術で、一番攻撃力のある魔術を放つ事にした。

 マナを操作し、頭上に一気に貯める。

 そしてアイエル様も使った水の生活魔術を改変して、超巨大な水球を生成し、それをマナの幕で一気に圧縮する。

 圧縮しすぎると水は凍ってしまうので、そのギリギリのラインを見極める。

 そして、狙いを定め、マナで水圧をブーストしながら超水圧ビーム(仮)を、的に目掛けて放った。

 超水圧ビーム(仮)は設置していた的を破壊し、そのまま轟音と共に訓練場の壁を結界諸共吹き飛ばし、屋敷の屋根の一部を吹き飛ばして空へ消えていった。

 俺は思わず「あ…」と間抜けに呟いてしまった。

 これ、俺の身長がもうちょっと高くて、的の位置が低かったら、もっと大惨事になってたかもしれない…


「「「「「「!!!!!」」」」」」


 他の皆も目の前で起きたその惨状に、口を開けて絶句している。


 イリナ先生は「うそ… 私の鉄壁の上級防御魔術があっさりと…」と呟いて、かなりショックを受けている様だ。

 アイエル様だけが「すごーい!」と言って、無邪気にはしゃいでいるのは御愛嬌と言ったところか。

 これはまたやらかしてしまった。 吹き飛ばされた屋根の彼方には、俺の魔術のせいで虹が出来ていた。

 アイエル様は可愛いなー 虹もキレイだなー(現実逃避)


「おいロゼ! なんだ今の魔術は!」


 カイサル様は慌てて俺に聞いてくる。


「えっと、普通の生活魔術をちょっと改変した水球魔術です」

「「「「「「何処が普通だ(よ)(じゃ)!!」」」」」」


 アイエル様以外の全員の声がハモった。


「普通の生活魔術が的を破壊して、結界魔術で強化された訓練場の壁を破壊し、屋敷の屋根まで吹き飛ばせるものか!」


 そうですねー。 おもいっきり怒られた。

 それよりもどうしよう… お屋敷の屋根吹き飛ばしちゃったよ…


「ご、ごめんなさい… お屋敷の屋根、壊しちゃった… どうしよう…」


 俺は涙目で父様に救いを求める。

 父様はそんな俺の様子を見て「はっ」とし、慌ててフォローに回る。


「旦那様! 申し訳ありません! まさか、息子がとんでもない魔術を使って屋敷を破壊してしまうとは…… 必ず弁償致しますので、どうか平にご容赦を!」


 父様は俺の頭を手で下げ、自分も頭を下げる。

 カイサル様はため息を零し、頭を上げる様に言う。


「バルト、お前たちが謝る事ではない。 こんな事態になる事など誰も想定できん。 まさか結界ごと破壊してしまうとはな… まだまだロゼに対する認識が甘かったか…」


 そう言って眉間を抑える。

 結界を破壊されたイリナ先生は、目の前の惨状に理解が追い付かず、呆然とそれを見つめてなにか呟いている。


「これは現実? いえ、夢に違いないわ… 何あの攻撃魔術。 見た事ない魔術だし、あの威力からして特級魔術… いえ、見た事も無いからもしかしたら神級魔術の類かもしれないわ…… そんな魔術にお目にかかれるはずなんてないもの… これは夢、夢よ。 早く目を覚ますのよ私……」


 戻ってきて、イリナ先生……

 カイサル様も同じ事を思ったのか、イリナ先生を怒鳴りつける。


「イリナくん! 状況は理解できるか?」


 イリナ先生はその声で正気に戻り、「え? あ、 はい」と慌てて状況を把握する。

 そして、現実に引き戻されたイリナ先生は、自分の上級魔術をいとも容易く上回る魔術を放つ三歳児が、自分の教え子であると言う現実に直面する。

 理解できない。 何それ怖いと言った感情からか、カイサル様に懇願する様に縋り付き、半泣きで家庭教師を辞退を申し出る。


「カイサル様ぁあ! 私、ロゼくんの家庭教師とか無理ですぅ! 教えられる事なんて何もありませんよぉお! これは出来損ないの私に対する当てつけですかぁ!」


 完全に心が折れていた。

 アリシア様は「あらあら」と楽しそうに見守っている。


「だいたい神級魔術に匹敵する魔術を使える三歳児に、上級魔術までしか使えない私が、何を教えれると言うのですかぁあ! それに本当に三歳児なんですか! 意味不明です! なんで他の皆は平然と受け入れてるんですか! 無理です! 絶対無理ですぅ! 実家に帰らせてくださいぃ!」


 取り乱して捲し立てるイリナ先生。 いや言いたい事は分かるんだけど……

 イリナ先生との間に生まれたと思った友情は、気のせいだった事がはっきりした。


「いや、イリナくん。 それは困る。 少し落ち着いてくれ。

 屋敷に着た時に説明しただろう。 ロゼを常識で測るなと……

 君は普段通り、普通に魔術を教えてくれればそれでいいんだ。 ロゼより強くないとダメだとかそう言う事はない。 ロゼは天才だが、誰にも師事してもらっていない。 本当に常識を教えてくれるだけでいいんだ」


 カイサル様は慌ててイリナ先生を宥める。

 なんか、俺の事をどう言う風に説明したのか気になるが、この際聞かなかった事にする。 俺も初めて魔術を師事してくれる先生に辞められたら困る。


「そうですよイリナ先生! カイサル様の言う通りです。 ぼくが使える魔術は、生活魔術の改変したものしか使えません! すごく偏った知識しかないんです。 だから知らない魔術をいっぱい教えて欲しいです!」


 必死にイリナ先生にお願いする。


「それに、素人のぼくの魔術が、イリナ先生の上級魔術に敵う訳ないじゃないですか」


 俺がそう言うと、全員から一斉に「「「「「「それはない!」」」」」」と全否定された。

 解せぬ…

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