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壬生寺は さすがに(律宗)別格本山だけあって 大きく立派だった。
そして その姿はかつてドラマのオープニングで見た そのものだった。
本堂にお参りをして 壬生塚に向かう。
池に架かる小さな橋を渡ると そこが壬生塚だ。正面に 新選組局長 近藤勇の像。
その前で 観光客らしいご夫婦が 写真を撮っておられた。
二人は僕に気付くと
「この像の前で 二人で写真を撮りたいので シャッター押してくれないかな」と 言ってこられた。
僕は それまでカメラなど さわったことがなく 困っていると、後ろから
「私が 撮りましょうか」との声が聞こえる。
振り返ると まるで雪だるまのような 体型の小さなおじさんがいた。
「壬生に生まれて 40年、壬生の古だぬき 富士 礼治 です。
さ、写真撮りましょ」
と ご夫婦からカメラを 奪うように取ると シャッターを 切られた。
「あんたも 一緒にどうや」
と 無理やり僕も並ばせると ご夫婦も苦笑いを 浮かべながらも それに応じてくれた。
やがて ご夫婦は おじさんにお礼を述べると壬生塚を 後にされた。
「あんた 小さいけど年は いくつや? どっから 来はったんや?」
雪だるまのおじさんは 僕に 立て続けに きいてくる。
僕は自己紹介が苦手なのだが それでも新選組と出会って 今日までのことを おじさんに 話した。
そして 栄子お姉さんの話なると
「倉田栄子さんいうたら 東京のお方やな。遠いとこ 年に何回か通てはる 熱心な方や。
確か『新選組研究会・誠一筋』の 会員さんやな」
僕は ここで初めて お姉さんの参加しているサークルのことを知った。
「私も こんな会やってます」
と 手渡してくれたのは サークルの会報だった。
『京都偉人之会』というらしい。
「あんたの話からすると ノート持ってきはったんやろ。ノートは この箱の中や」
と 像の下にある 雨よけのスペースから 小さな木の箱を取り出し、木のふたを開けられた。
箱の中には 色々な ノートが入っている。
かわいいイラストが描かれたものや色紙を切り貼りしたものなど 20冊程度。
おじさんは その中から 『誠ノート』と 書かれた一冊を 取り出し
「これが 私の ノート」
と 見せてくれた。
その中には 先ほど見た 筆ペンの光村さん。
「あの この人?」
僕が尋ねると
「大阪の人や。坂本龍馬のファンやけど 新選組の沖田はんも好きや、言うてよう来てはるな。」
聞けば かなりの龍馬ファンで 龍馬の墓参りがしたいばかりに 京都の会社に勤めて、夜勤あけには ほとんど毎日 龍馬の墓にお参りに行っているそうだ。
あの しょぼくれた おじさんが、と 内心驚いた。
その後も 雪だるまのおじさんは 壬生塚について 色々説明してくださった。
近藤勇局長の 遺髪塔や 隊士たちの墓について、隊士たちは 最初 壬生村の共同墓地に 葬られていたが、ここに改葬されたこと。
ある時期からは 光縁寺が 墓所となったこと。
更には 壬生塚にある『人丸塚』が 柿本人麻呂の塚だということ。
他にも 聞きたい話が いくつもあったが 帰る時間がせまり壬生に心を残しながら この地を あとにした。
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