本堂に 入ると正面に立派な仏像。

向かって左奥に位牌が祀られている。

 その手前に 机が置かれ一人のおじさんが 熱心にノートを 読んおられた。


 僕に声をかけてくれた、あの おじさんだ。

 そのおじさんは僕に記帳をすすめると本堂を出ていかれた。


 改めて回りを見て見ると、位牌には『新選組隊士之霊位』の文字。


 そして机の横には 本棚が置かれ 本や資料、アルバムなどがびっしりと積まっていた。

 そこに貼られていた説明文。

 それによると それらは新選組研究家やファン、サークルからの寄贈によるものだそうだ。

 難しい研究書や小説 アルバムや同人誌などの積まったその 端には、机においてあるノートのバックナンバーらしき 30冊ほどのノートもあった。


 ……これが?


 思わず手に取ったノートの表紙には『どなた様も ご自由に ご記帳ください。

 光縁寺』



 そう このノートこそ光縁寺ノートなのだ。


 No.1と書かれたノート。おそらく一冊目なのだろう。最初のページの日付は 昭和47年1月1日。今 机の上に乗っている 一番新しいノートは No.32。

わずか3年で 32冊。

 全部の書き込みに目を通したかっが とても時間が足らないので 一番新しいノートを見てみた。



 そこには 新選組への熱い思いが びっしり書き込まれ、さらに お手紙ください、や サークル紹介など まさに新選組ファンのためのノートだった。


 一番新しい書き込みは 今日。

 時間も 書いてあり 30分前。

筆ペンでノートいっぱいに 『明けましておめでとうございます。今年も 通います。光村宗政』

の文字が。


 あの おじさんかな?

そう思いながら 僕も記帳した。


『初めて 来ました。感動しています。オックン』

と。



 そういえば とふと思い出して 栄子お姉さんと会ったころの日付をさがす。


 やっぱり、

 栄子お姉さんの 記帳もあった。


『きょうはサークルの総会で これから壬生寺に行ってきます。

 昨日は 小学生の恋人とデートしたよ。』


 思わず 胸がキュンとなってしまった。



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る