第3話 告白

「亜衣さんて、休みの日はどうしてるの?」翔が聞いてきた。

「うーん。私、お酒飲むと次の日、どうしても遅く起きちゃうのね。土曜日を朝から活かす為に金曜夜に早く寝るか、金曜日の夜にお酒を飲むかをよく迷っているの。まぁ迷っている時点でダメダメなんだけど」


 これは私のほぼ毎週の課題のようなものだ。

 二十代の頃は、次の日の事はそこまで重大に考えなかった。

 三十歳になってもフラフラ遊び歩いていて、もう少しちゃんとしないといけないんだろうなって思う。


「そうかな、そんな事ないよ」翔はいつも優しい。

翔はルックスもモデルみたいにかっこいいし、性格も良いのでとても人気がある。

「まぁ、私は確かにアホだからなぁ」笑いながら云ったら、直樹が突然声を荒げた。


「そういう事じゃないんだ、翔が他人をアホだって云ってるみたいに捉えないでほしい」直樹は、私を見ないで叫んだ。


「何で怒ってるの?」私はきょとんとして、直樹を見つめた。

 予想外の展開に驚きつつも、少し高揚している自分がいた。

 心の中では、もしかして私に特別な感情を持っているのかな? などと思っている。


「ないから」直樹が私を見て、ぼそりと云った。


 え? 私の心の声が、聞こえたのかな。ないって、何がないんだろう。

 私と直樹、もしかして、無意識下で繋がっているってやつかな……。私の妄想は、止まらない。

 季節は、夏になる。開放的な、夏に。


    〇●


 直樹に告白をした。

 先日、私の心の声が聞こえたような出来事で、一気に私の気持ちは膨張した。

 結果は、フラれた。


「俺、バイセクシャルだから」少しの沈黙の後、直樹は云った。


 バイ? 男も女も恋愛対象って事? だったら私にも可能性ありって事じゃないのかな。

 少しの期待を持った瞬間、すぐに打ち砕かれた。


「選ばない、亜衣さんの事は、選ばない」直樹ははっきり云った。

 どうしてそこまではっきり云うんだろう。怖くて理由も聞けない。私は絶句するしかなかった。


「亜衣さん、ライバルかと思っていたけれど、もっとムカつく」直樹は、私の目を見て今までで一番はっきりと云った。


「どういう事?」私は、それしか言葉が出てこなかった。


 直樹は何も云わず、私も何も云わない時間が続いた。

 時間にしたら、十秒位だったのだろう。とても長く感じた。

 そこへ突然ギャルが現れた。先日、ライブハウスで直樹と仲良く話していたギャルだった。

 ギャルは直樹と自分の腕を絡めた。……何なんだ。


「こいつ、セフレ」直樹は、ギャルを顎で指して云った。

「は?」私の最後の台詞は、一文字だった。

 頭の中にはてなマークが飛び交っていた。

 直樹と、セフレと呼ばれたギャルは腕を組んだまま、立ち去った。


    〇●

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