第23話 惑星ミルカ
翌朝アシュレー達は起床して準備が整うと、マイクロバスに乗り込みレンティス宇宙港へと向かった。すると既にクルー達四人は集合しており、機体の最終チェックを行っていた。
「ようお前ら、早いな!」
「おはようございます艦長」
「おはよーっす艦長!」
「おはようございます」
「機体チェックのリスト、こちらにまとめておきました」
「おう、サンキュー」
アシュレーは手渡されたファイルを読み、問題ない事を確認すると、ミカとリノ、ドノヴァンを引き連れてウートガルザ号のタラップを上った。戦闘指揮所に着くと、アシュレーは各機器のチェックを行う。
「リノ、ドノヴァン、出発までまだ時間がかかるから、適当に過ごしていてくれ」
それを聞いたドノヴァンが、質問を返してくる。
「アシュレー様、次の目的地は?」
「惑星ミルカだ。そこでタングステンとハイドロゲン鉱石を買い付けた後に、惑星リュオンへと向かう」
「了解しました」
そうして機体のメンテナンスが終わる頃には、夕方となっていた。クルー達も戦闘指揮所に集まり、全ての出発準備が整った。全員がシートベルトを着用し、カティーが管制塔に通信する。
「こちらウートガルザ号。定刻通りこれより出発します、送れ」
「ウートガルザ号了解、二番滑走路にタキシングしてください」
「了解、交信終わり」
カティーがエンジンを起動させると、独特の甲高い音が戦闘指揮所に響き渡る。トーイングカーに先導されて整備ハンガーを抜けたウートガルザ号は、ゆっくりと二番滑走路に向けて進路を取った。定位置に着くと、カティーは再度管制塔に連絡する。
「こちらウートガルザ号、これより離陸します」
「了解ウートガルザ号、良い旅を」
カティーはスロットルを前に倒し、エンジンを全開にした。微細な振動が戦闘指揮所に伝わり、150ノットに達した時点で機首を持ち上げる。そしてウートガルザ号は加速を続け、あっという間に大気圏を離脱した。それを見てアシュレーが指示を送る。
「ソフィー、惑星ミルカまでの座標入力。クロエ、ハイパードライブ充填。ミア、レビテート慣性制御システムの調整頼むぞ」
『了解』
そして準備が整い、ウートガルザ号はワームホール航行に突入した。アシュレーとクルー達はシートベルトを外し、それぞれの機器を確認していくが、そこでソフィーのコンソールパネルにレッドアラートが点滅した。
「艦長!」
「どうした?」
「後方にアンノウン一隻確認。こちらの座標をトレースしてきたものと思われます。距離約10万キロ!」
「ワームホール空間をトレースしてきただあ?一体どこのバカだそいつは!」
「艦長、船籍確認。ビーマ級の小型戦闘艇っす!」
ミアがそう答えた瞬間、後方からレーザーが飛んできた。カティーが既のところでそれを躱す。アシュレーは咄嗟に激を飛ばした。
「馬鹿野郎が、ワームホール空間でやる気か?!上等じゃねえか、カティー、操舵をこっちによこせ!俺が対処する、電磁シールド出力最大!」
「お願いします艦長!」
ワームホールの境界面を舐めるようにしてアシュレーはウートガルザ号を操った。敵のレーザーを躱しながら、アシュレーはクロエに指示した。
「クロエ、ダブルワープ準備!一気に離脱するぞ!」
「了解!カウントを開始します。20・19・18...」
「ミア、後方に向けて反撃だ!」
「了解っす!」
ワームホール内での戦闘は、非常に危険を伴う。境界面に深く入りすぎれば、機体がバラバラに砕け散る危険性があった。しかしアシュレーは、そうした危機を幾度となく潜り抜けた経験がある。そうしていつの頃からか、アシュレーのウェーブライダーというタックネームが敵味方双方に知れ渡る要因となったのである。
「ダブルワープまで5秒、4・3・2・1・起動!」
光のトンネルがさらに眩い光を放ち、ウートガルザ号の速度が跳ね上がった。そして敵を振り切り、アシュレー達は安堵のため息をついた。
「アンノウン、レーダー圏外。周囲に敵影なし」
「よし、そのまま警戒続行。クロエ、ダブルワープ解除だ」
「了解」
アシュレーは冷や汗を拭いながらリノとドノヴァンを見た。一体誰に狙われているのか疑問に感じつつ、アシュレーは惑星ミルカへと進路を取った。
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