第21話 遊園地 1

 翌朝アシュレー達は目覚めると、一階のリビングまで足を運んだ。そこで軽い朝食を摂り、皆は着替えて外出の準備を整える。


「ミカ、リノ、忘れ物はないな?」


『ない〜!』


「よし、じゃあ行くぞ、ファラウェイパーク!」


 アシュレー、イオ、ミカ、リノ、ドノヴァンの5人は、玄関を出た向かいに止めてあるマイクロバスに乗り込み、一時間半ほど車を走らせた、するとファラウェイパークの駐車場が見えてきた。そこに駐車しバスのドアを開けると、ミカとリノは待ってましたとばかりに外へ飛び出した。


「わ〜いわ〜い、ファラウェイパーク〜!」


「リノ、遊園地なんて初めて来たよ。何か楽しそうな場所だねミカちゃん!」


「楽しいよ〜!パパ、ママ、早くゲートの入り口に行こう?」


「待て待て、そう急かすない」


「遊園地は逃げたりしないわよミカ?」


「リノちゃんに中を見せてあげたいんだ〜。早く行こうよ〜」


「へいへい、少々お待ちをっと!」


 アシュレーは運転席から飛び降りると、車のセキュリティロックをかけてミカ達の前に来た。ミカは左手、リノは右手を握ってアシュレーを引っ張りながら、ファライェイパークの入り口前にたどり着いた。受付で大人3名・子供2名のフリーパスチケットを買うと、入場者カウンターをを通り園内へと入った。


 そこはまさに夢の国。何種もの花が円形の花壇に咲き乱れ、ゲート正面には、天窓の付いた巨大なショッピングモール入り口がそびえ立っていた。入場者が多いため、迷子にならないようアシュレーはミカとリノの手をつないだまま先へと進む。


 そのショッピングモールの左右には、子供心を鷲掴みにするキャンディやクッキー等のショップに、キャラクターグッズ専門店がずらりと立ち並んでいた。ミカとリノは目をキラキラさせながら目移りしている様子だ。アシュレーとイオはそれを微笑ましく眺めていた。


「ミカ、リノ、キャンディ食べるか?」


「やったー、食べるー!」


「ありがとうおじちゃん!」


 五人はキャンディショップに入り、渦巻状の大きなキャンディを選んで買ってもらった。ミカは赤と白のストライプ、リノは青と白のストライブだ。


「ん〜、美味しいよパパ!」


「ミカちゃんのはいちご味で、リノのはミント味だね〜」


「美味しいね〜」


 そうしてしばらくショッピングモール内を探索し、アシュレー達は開けた出口へとたどり着くと、そこはまるで異世界だった。空は広く、中世的な建物や近未来的な趣を持つ建造物がズラリと並び、目の前には人工的に作られた湖まである。


 以前アシュレーはミカやイオと何度も来ているために、マップが頭の中に入っていた。アシュレーはキャンディを食べている二人に声をかける。


「さてミカ、リノ、何に乗りたい?」


「フォレスト・クルーズがいい〜」


「リノはよく分からないから、ミカちゃんに任せる」


「そうかそうか、よしじゃあ一発目、行くか!」


「行くか〜!」


 フォレスト・クルーズの乗り場まで移動し、約20分ほどかけて順番が回ってきた。二十人程のボートに乗るアトラクションだったが、リノが不安そうな顔でミカとアシュレーを見た。


「み、ミカちゃん?これって怖い乗り物じゃないよね?」


「怖くない怖くな〜い!大丈夫だよリノちゃん!」


「わ、わかった。リノ頑張る!」


 そしてボートに乗り込むと、ゆっくりとアトラクションはスタートした。水辺の中には作り物のワニや魚等が泳いでいる。途中船の運転手が銃を取り出し、襲ってこようとするカバや原住民達を撃退しながら進むというシーンも見られたが、やがて船は薄暗い岩山の洞窟の中へと入っていく。


 そこでは多数の敵が襲ってくるが、それを運転手が撃退していく中、何と運転手の弾が切れてしまうというハプニングが起きた。それを受けて運転手は船のスロットルを最大にし、その場を強行突破していく。


「皆さん、脱出しますよ!何かに捕まってください!!」


 運転手は迫真の演技を見せるが、無論振り落とされる程のスピードではない。わずかに差す光からミカとリノの表情が見て取れたが、二人共が手に握りこぶしを作り、興奮している様子が伝ってきた。


 そして無事に洞窟を抜けて、皆が安堵のため息を漏らした。そして船は指定のエリアを一周し、船着き場へと帰還した、船を降りたミカとリノは興奮気味に感想を述べ合う。


「すごかったねリノちゃん!」


「動物だけじゃなく人間も襲ってくるなんて、ドキドキしちゃった!」


「あんな弾が切れるなんて演出、前はなかったんだよ。あたしもドキドキしちゃった!」


 アシュレーはその様子を微笑ましく眺めながら、言葉を挟んだ。


「ミカ、次は何に乗りたい?」


「ゴーカートに乗る〜!」


「よし、イオ、ドノヴァン、五人全員で競争だ!」


「私も乗るの?まあ別にいいけど」


「惑星エイギスには遊園地なるものがありませんでしたので、これは楽しみですな」


「決まりだな。西のエリアに行こう、そこにゴーカートがある」


アシュレー達四人はフォレスト・クルーズを後にし、ゴーカート乗り場へと向かった。

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