第3話 ミカ・ブルームフィールド
アシュレーとその腕に抱えられたミカは、30平方メートル程の長机と長椅子が並んだ食堂に入った。そして大型のキッチンに入ると、壁際にかけられた白色のエプロンを手に取り、それを腰に結ぶ。そしてそのハンガーの隣にあるひときわ小さなエプロンを手に取ると、それをミカに手渡した。ミカもそれを頭からかぶり、腰紐を一所懸命結びつける。
「うんしょ、うんしょ」
その健気な姿に、アシュレーは微笑まずにはいられなかった。
「ミカー?今日はパパが全部作ってもいいんだよ?」
「ううん、大丈夫だよパパ!あたしはウートガルザ号の食事担当だし!味見担当でもある!」
「ハハ!そうかそうか。じゃあ早速だけど、冷蔵庫から食材を持ってきてくれるかな?ニンニク、生姜、玉ねぎ、人参、挽肉、ソーセージ、ピーマンと、隠し味にウスターソースを持ってきてくれるかな?」
「りょうかーい!」
ミカは満面の笑みで冷凍室の扉を開け、指定された食材を持ってきた。それらをアシュレーが手早くみじん切りにし、大型のフライパンに植物油を敷いてニンニクと生姜を投入する。
「ミカ、クミンシードと鷹の爪を持ってきて」
「はーい!」
ミカはスパイスの置かれた棚から指定されたものを手に取ると、アシュレーに手渡した。
それらと野菜・肉類を投入し、フライパンを振るって炒めると、アシュレーはミカを見下ろした。
「ミカ、カレー粉持ってきて」
「うん!」
そう言うと、ミカはカレー粉の入った透明の瓶をまるごと持ってきた。アシュレー秘伝のゼロからスパイス配合を施したカレー粉である。
それをアシュレーはひとさじ取ると、フライパンの中に満遍なく投入した。弱火でかき混ぜながら香りをつけていく。そして巨大な炊飯ジャーを開け、炊けたご飯を全て投入して一気に強火で炒めた。更にカレー粉を投入し、今度は弱火にして全体に絡めていく。
そして更に、溶かしておいた鶏ガラスープをひとさじ注いでかき混ぜた。火が通った所でアシュレーは一口つまみ味見をする。その味に納得し、小皿に乗せてミカにスプーンと一緒に手渡した。
「ミカ、食べてごらん」
ミカはニコニコしながら小皿を受け取り、ドライカレーを一口食べる。
「んー!!パパすごい美味しいよ!」
「よーし!これで完成だな」
アシュレーはそれを小分けにして皿に盛り付け、冷蔵庫に保存しておいた手作りのコンソメスープをレンジに入れる。そして新鮮な野菜を刻み、サラダを小皿に盛り付けると準備は完了した。アシュレーは耳に装着したインカムのボタンを押す。
「野郎ども、メシの時間だ!全員食堂に集合!!」
その声は宇宙貨物船・ウートガルザ号の中に響き渡った。
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