第20話 プチ家出騒動 3
頭の中に『離婚』という言葉がグルグルしているので納得のいかない顔をしていたので心配になったのかもしれません。
夫は急に
「夫は俺が謝ればいいんだろ?」と言い始めました。
私が黙ったままでいるとイライラしたのか
「俺が謝れば丸く収まるならいくらでも謝ってやる。」と言った時は本当にがっかりしました。
そして更にがっかりする言葉を聞かされます。
「しかし、ピアノの練習とパチンコは同じだからな。遊びは遊び。パチンコはまだ稼げる時もあるけどピアノの練習は稼ぎにもならない。好きなことをしているだけの時間なんだからパチンコ以下だけど、まぁ俺も負ける時はあるから同じかな。」
あまりの言いように返す言葉が見つからず呆然としていると
「まぁ、俺が悪かったよ。ママの機嫌を損ねるようなことをしたんだし。今後は気をつけることにするよ。」
と付け加え、さあ帰ろうと促され2人で家に帰りました。
家出とは言えないような家出でしたし納得は出来ない内容でしたが、とりあえず話し合いをすることが出来たのは私たち夫婦にとって物凄い進歩でした。
この後、このような小さいケンカが時々起きるようになりました。
その度、離婚の一言を呑み込みながら小さい話し合いをして過ごしていました。
そんな夫婦にとっての最悪の時期のことです。
長女が短大へ進んで慣れた頃に、1人旅がしたいと言い始めました。
発達障害のある長女にはいろいろな経験が必要だと思い、あまりいい顔をしない夫に許可をもらってから行かせてやることにしました。
旅行の前日にバスセンターの中にあるバス乗り場に一緒に行き、娘に一人で乗り場の確認と乗車券の買い方の確認をさせました。
そして、旅行当日は雨がザァザァと降っていたので車で5分程の午後8時にバスセンターに家族で送って行きました。もちろん、夫には一緒に行こうと声を掛けて連れていきました。正直、まだ夫に良い父親をやらせたかったのです。
実はこの前日に大きな夫婦喧嘩をしていました。
夫はずっと家にいて、私だけ忙しいことに腹が立ってイライラしてしまうのです。
娘をバスセンターへ送って行った後、次女がすぐに寝てくれたので前日の夫婦喧嘩について話し合いをすることにしました。
もちろん私から声をかけて始まり、話し合いといってもほとんど私が不満を言うのを夫が仕方なしに黙って聞くだけでした。
黙って聞いていた夫が、「それで俺はどうすればいいの?」と言うので
「自分で考えれば?自分で考える気が無い訳?」と言い返し、私が「離婚」の一言を言おうとした瞬間、
電話が鳴りました。午後10時30分を過ぎていたと思います。
電話に出ると一人旅に出て福岡に向かうバスに乗っているはずの娘が「ママ〜‥」と泣いていました。
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