PART4
数分後(正確には5分とちょっと、かな?)俺は店の中に戻ってきた。
バーテンは、俺の顔を見ると、驚いたような顔をした。
『あ、あんた一体?』
俺は黙ってバッジとライセンスを出して、彼に示した。
『さあ、案内して貰おうか?」
『あ、案内?』
バーテンは夏場の鯉みたいに口をパクパクさせ、どもりながら言った。
『決まってるだろ?この店の経営者だよ。もう下調べはついてるんだ』
『・・・・』バーテンは携帯電話を出して、ぼそぼそと低い声でどこかに電話をかけると、店にいた別の店員に、
『ちょっと出てくる』と言い残し、先に立って歩きだした。
え?
(さっきの連中はどうした)って?
決まってるだろ。
畳んじまったよ。
自慢話は嫌いだって、何度言わせりゃ分かるんだ?
まあいいや、
バーテンは商店街に出ると、タクシーを止めて乗りこんだ。
随分大きな屋敷だ。
その筋ってのは結構儲かるもんなんだな。
門構えなんか随分金がかかっている。
屋敷は門からじゃ見えないような造りになっているものの、屋根だけは見事な瓦が乗っかっているのが分かった。
塀の上には全部、まるで戦国時代の砦のような武者返しが取り付けられてあった。
バーテンは門の前でタクシーを停めると、門に取り付けてあるインターフォンのボタンを押した。
すると、門の片側の潜り戸が内側にゆっくり開き、中から如何にも、
『その筋でござい』と言う顔をした20歳そこそこぐらいの、黒っぽいツナギのような服を着た若い男が顔を出した。
若い男はバーテンの言葉に、俺の顔を胡散臭い目つきで睨みつけ、
『入れ』と、低い声で言った。
『すまねぇが、ボディチェックだけはさせてもらうぜ』
門の内側に入ると、あと2人ぐらい、同じようななりをした男たちが出てきて、俺の前に立ちふさがった。
俺は黙って、言われた通りに両腕を水平に上げ、好きなようにチェックをさせた。
案の定、俺の左わきのホルスターに吊るしたM1917と、腰につけていた特殊警棒を見つけ、
『悪いが、こいつは預からせて貰うぜ』
『そりゃ構わんが、ちゃんと預かり証は出してくれよ。こっちにとっても大事な商売道具なんだからな』
兄貴分と思しき男が、苦い顔をして若い男に、
『おい』
と首を振る。
若い男は銃と警棒を受け取ると、俺にプラスチックの札を渡した。
『こっちだ』
顎をしゃくり、俺達二人を建物に案内する。
飛び石を10メートルほど歩くと、そこは豪壮な玄関だった。
『あんたら、儲かるんだなぁ。少しはこっちもおこぼれに預かりたいもんだな』
俺が笑いながら冗談を言っても、連中はぶすっと黙り込んで何も答えない。
脇玄関の扉が開き、俺とバーテンは中へと入った。
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