PART3

 やれやれ、腰が痛いな・・・・


 博多駅のプラットフォームに降りると、俺は大きく伸びをし、欠伸をした。


 列車の旅は決して嫌いじゃないが、4時間以上も腰かけているってのが何とも応える。


『歳のせいか』なんて愚痴ってみても始まらん。


 仕事なんだからな。


 ここへ来る前、俺は彼女の勤めていたというイメクラに行ってみた。


 ああいう店と言うのは、どこでもそうだが、女の子の出入りは激しい。


 どんなに長くてもせいぜい5年位がいいところだ。


 だから、店の人間が彼女の事をあまり覚えていなくっても仕方がないといえばそれまでだが、にしても名前を出すと妙に口ごもるところに俺は違和感を感じた。


 店長やマネージャーに幾らか掴ませ、それでもまだ喋らんとなると、幾分低音も響かせ(本当はあまり使いたくないんだが)、やっと聞き出したところによると、『カナ』は、北九州はO市の出身で、以前は石炭の積み出しなどで栄えた町らしいが、今ではギャンブルと・・・・そしてその筋の町として知られている。


 店の人間の口が重かったのは、そのせいだったのだ。



 俺は博多駅で在来線に乗り換え、O市へと向かった。


 見た目は何てことのない。


 いや、それどころか結構栄えている街に見えた。


 繁華街にはスナックだの、バーだの、クラブだのがあり、結構賑やかだ。


 とりあえず俺は手近なビジネスホテルにチェックインし、暫くそこで時間を潰すことにした。


 

 ベッドに横になり、目を瞑ると、直ぐに眠ってしまった。


 いつでもどこでも眠れるというのが、この俺の得意技の一つだ。


 目を覚ますと、時計はもう既に8時を回っている。


(頃はよし)


 俺は部屋を出て、目指す店に向かって歩く。


 そこはO市でも一番の繁華街だ。


 その中の一番奥・・・・路地を一筋入ったところに、その店はあった。


『メンバーズ・黒猫』


 まあ、ありきたりな名前の、結構淫靡な雰囲気を醸し出す店だ。


 俺は構わずドアを開けると、中から刺さるような視線が四方八方から突き刺さった。


『お客さん、看板見なかったのかい??』


 青白い顔をした目つきの鋭いバーテンが胡散臭そうな声で言った。


 俺は構わず、カウンターの端に腰かけ、


『ウィスキーの水割り、ダブルで』


 と声を掛けた。


『聞こえなかったのかよ?ここは会員制なんだよ』


『だったらどうした?』


『出てけってことだ!』


『俺は旅の人間でね。おまけに目が悪い。だから字が読めなかったのさ』


 バーテンはちッと舌を鳴らし、俺に勘定を書いた紙を突き付けた。


『15万円也』


 と書かれてある。


『それだけ払って、とっとと帰りな』


『やだ、といったら?』


 彼が首を振ると、店の奥から目つきの悪い連中が四人出てきた。


『兄ちゃん・・・・顔貸して貰おうか』


『こんな顔でよけりゃな。まあ、店でやると迷惑だろうから、外に出ようか?』


 俺はにやりと笑って、先に立って表に出た。






 

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