思い込み

俺達三人を、屋上の扉の陰から見る謎の影。

そして俺達が校舎内に戻ろうとするのがわかると、その影の人物は



「あっ!こちらに来る」



急いで階段を駆け下りた。

そうとは知らず、俺が扉を開け階段の方を見ると、誰かが階段を駆け下りるのがチラリと見えた。



「うん?‥‥‥誰か居たのか?」


「ヒロ、どうした?」


「宗吉、うん。誰かが居たような感じがしたんだが」


「えっ!誰か居たの?」




俺が言うと彼女、朝日 ヒロミは何故かわからないが、急いで階段の方に近寄ると階段手すりに手を置くと手すりから下を覗き込む時に誰かがスウッと降りていく感じが見て取れた。



「今、緑のシューズが少し見えた」


「緑のシューズ?‥‥‥三年生か?」



因みに俺達の学校は学年ごとにシューズの色が違う。

1年が赤、2年が青、3年が緑。

つまりは3年の誰かが俺達を見ていたのか、それとも何か忘れて急いで戻ったのか、いずれにせよ誰かが居たのは確か。


で、彼女は不安そうな顔をして階段の下の方をジィと見ていたので、俺は



「3年生の知っている先輩は何人か居るから、俺達の事を嗅ぎ回っている奴がいるかそれとなく聞いてみるか」


「そうだな。俺の方も聞いてみるよヒロ」



俺と宗吉が言うと彼女は、俺の方を見て少し安心した顔をすると、黙ったままコクリと頷いた。

けど、何故彼女はあんなにも慌てて階段の下を見たり、さっきみたいな安心しきった顔をするのか俺にはわからなく、それとなく彼女に聞いてみた。



何故、安心しきった顔をするのか、と。



「だって‥‥‥貴方‥なんだか女子に‥モテているみたいだから‥」



彼女なんだか、また不安そうな顔をすると、今度は少し涙目になりそうな感じで言って来た。

それを聞いて彼女の目を見た俺は、『なんて俺はバカなんだ』と思った。

こんなに彼女の事を不安がらせた俺は、彼女に女子にモテる事を否定しようとしたら、



「えっ?こいつがモテるって! プッ、アハハハ!こ、こいつがモテる?じょ、冗談だよね。プッ(笑)だ、だってこいつが女子から告白されたのは恵美だけだから。他の告白は男子からの告白だからね(笑)」



宗吉が俺が否定する前に彼女に言いましたよ。しかも余計な事付きで。

しかし、確かにそうなんですよね。

女子から告白されたのは恵美だけ。後はあのおぞましい中3の時の文化祭の時から男子に告白された事のみ。

しかし宗吉!お前言いすぎたぞ!そこまで笑われて言われたら、俺のガラスの様な心が砕け散るじゃないかよ。



「えっ?ガラスのハート?お前が?(笑)」



またまた笑いながら言って来ましたよ宗吉こいつは!

で、俺は彼女の方をチラリと見たら、なんだから胸に手を置き、安心したのか胸をなでおろしていたんです。

まあ、何にせよ俺は彼女の安心した顔を見たら、俺まで安心しましたよ。



けど‥‥‥俺は、今の彼女、朝日 ヒロミを見て思ったんです。

この世界は確か、俺、朝日 ヒロミ(男)と彼女、朝日 ヒロミ(女)の二つの世界が融合した世界なはず。だからお互いの世界が半々くらい合わさった世界だと思った。

けど実際は違う感じがした。

なんだか俺が中心で世界が動いているような感じだ。

今の所は、であるが。


ただ一つ気がかりなのは彼女があの、しょう霊子れいこ先生を見て疑問に思わなかった点だ。

あの白い空間で精霊と名乗る者に会っていたのなら、俺と同じ気持ちになっていたはず。

だって彼女は俺が女だった世界の女であるから。

それに彼女も言っていた、「心が通じ合っているから」と。

しかしあの精先生を見ても彼女からは何も感じ取れなかった。

だから俺は彼女に



「あ、あのさぁ。後でふ、二人っきりで話がしたいけど‥‥‥いいかな?」



少し照れながら俺が彼女に言ったら、何を察したのか宗吉が



「あっ、俺先に教室に戻るわ」



そう言って宗吉は足早に教室へと戻って行った。

宗吉は昔から余計なお節介と言うか、気を使う所がある。だから誰も宗吉やつの悪口を言う奴は居なかった。

しかしそんな男に限り、女子にモテないんだよな。と以前宗吉が言っていたが、俺は知っている。宗吉あいつが数人の女子から好かれていたことを。

現にあの恵美にしても、幼い頃は宗吉を好きだったらしい。

と、余計な話で脱線したが、俺は彼女と二人きりになると彼女に聞いた、



「白い空間で出会った精霊て知っている?」



と。その俺の問いに彼女は少し不思議そうな顔をする。



「白い空間は貴方と会ったあの時だけよ」


「えっ?そうなんだ‥‥‥」


「その精霊てのは何?」



彼女は疑問に思う様な表情をして俺に聞いてきた。

俺はあの白い空間で彼女と別れた後の事をすべて話した。



「‥‥‥そうなんだ。あの白い空間にまた行ったんだ。そこで精霊と言うのに会った‥」


「ああ、そうだよ。そこでその精霊とやらに聞いたんだ。この世界は二つの世界が融合した世界。そして俺達二人はこの世界の特異点だと」


「‥‥‥世界の融合はわかったわ。けどその特異点の意味がわからないわ」


「俺にも正直、特異点の意味はわからない」



俺が申し訳なさそうに彼女に答えると、彼女から



「‥‥‥思い込み‥かな」


「えっ?思い込み?」


「そう、思い込み。思いが強い力がこの融合した世界の割合を決めていたら‥」


「‥‥‥そうだよ。うん!そうだよ!思い込みだよ!俺は君に、ミーちゃんに死ぬ程会いたかった」



俺は何かに感づいた喜びからか、彼女を抱きしめていた。彼女もいきなり俺に抱きしめられたので、キョトンとした表情を最初していたが徐々に顔を赤らめると、



「///ちょ、ちょっとヒ、ヒーちゃん///」


「そっか!思い込み!思い込みだよ!ありがとうミーちゃん」



俺が喜びのあまりにまだ彼女を抱きしめていた。彼女も俺に抱きしめられていたのが、心地よくなってきたのか俺の腰に手をまわす。


と、その時、屋上の扉をガチャと開く音がして扉が開くと



「あなた達!ここは学校よ!場をわきまえなさい!」



開けた扉の所に立った一人の女子が居た。






















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