第8話【会話】

彼女の口から出た言葉は、

「ここは北海道ですよ!」だった。


さすがに初老でアルコール依存な俺でも

それくらいは知ってるし!と思いながらも

無視されるよりは余程いい。

無視ほど残酷な行為はない!


返事が返ってきたことに嬉しくなった俺は

先ほど言った"老人のユートピア"

などという謎の言葉に答えることも忘れ


「少し話しませんか?」


と荷物を置いていたベンチを指差し

女性を誘ってみることにした。


女性は軽く頷く仕草をすると飲みかけの

ビールが置いてあるベンチまで来てくれた。

元来、話し好きの俺は堰を切ったように

全く関連性のない思い付いたことを

ひたすら話し続ける。

俺がここから見える夜景や星の話、最近見た

アニメの話、何故今自分がここに居るのか

など女性には全く興味ないであろう内容を

休みなく話している間、女性は時折頷く

ことはあったがずっと俺の顔を黙って

見続けていた。


渾身の喋りを披露しているにも関わらず、

ほとんど表情も変わらず声を発することも

ない冷静?な彼女。


(…冷静?…クール?よく見ると

顔にも見覚えがある気がする…)


まさか、新大阪で道を聞いたクールbaby?

いやいや、何で函館に?

気になった俺は彼女に聞く事にした。


「もしかして、数年前に新大阪の駅で

会っていませんか?」

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