第34話 10階層のフロアボス

翌日、俺は昨日の続きから探索を始める為に、朝一から迷宮の7階層まで一気に降りてきた。


昨日隠し部屋が在った場所まで行ってみると、そこは既に只の迷宮の側壁へと変化していた。


一定の時間が経過すると、リセットされてしまい隠し部屋の場所も移動してしまうのだろう。


俺は、その事を念頭に置いて8階層へと足を進めた。


「今日は、10階層に在るボスステージまで行く事が出来るかな」


8階層、9階層とシルバーランクの冒険者パーティを何組か見かけたが、それなりの強さを持ち合わせているようだった。


やはり昨日の事案発生は、相当イレギュラーな事だったんだろう。


俺は、そんな冒険者パーティーを横目に、目の前に現れる魔物だけを倒していき、最短ルートで10階層のボスステージを目指した。



そして、10階層へと階段を降りた所で休憩を取る事にした。


「まあまぁな時間で降りてこれたかな」


俺の腕時計の針は、その時...午後12時半を少し過ぎた処だった。


ボスステージをクリアすると、次回からは転移魔法陣が使えるようになるので探索を楽に進めるようになるので期待が高まっている。


「さて、休憩も十分に取れた事だし行ってみますか」


俺は、軽く頬を叩いて気合いを入れるとボスステージをクリアする為に動き出した。


探索は今迄通り、時計回りで進めていく。


そして、探索魔法を使いながら進んで行くと、今迄の階層よりも強い個体が居るのが分かった。

なので、なるべく戦闘を回避しながらボスの待っている場所へと向かう事にした。


「ありゃ、回避したはずだが。しょうがないか」


ゴブリンナイトが5体、俺の方へとダッシュしてきた。


「結構速いな、お前ら」と、独り言ちる。


俺は、ショートソードを構えると風魔法のカッターを付与して臨戦態勢を取った。


ガキッ! ガキッ~ン!


剣のぶつかる鈍い音が迷宮の通路に響く、このゴブリンナイトは結構な腕力を持っていた。


しかも、冒険者から奪った剣なのか良い物を装備している。


そこで、俺も負けじと身体強化を身体全体に掛けて斬撃を繰り出した。


俺との打ち合いに負けて、よろめいたゴブリンナイトの1体を切り伏せる。


その直後を狙って来た1体を交わすと、その横で機会を伺っていた1体の首を跳ねた。


残りは3体となったが、今度は襲い掛かっては来ずに様子見を始めてしまった。


そんなゴブリンナイトを待っていても面倒くさいので、俺は強めの威圧を放ち動けないようにすると、3体の首を次々に跳ねていった。


「南無三!」


そして、地面に落ちている5体分の魔石を拾い集めると、ボスの居る場所へと移動した。



「おぅ! このフロアのボスはゴブリンのビショップか」


ただ、昨日も思ったが迷宮内の個体は1.5倍ほど強化されているので、注意は必要だ。


俺の姿を認識した、ゴブリンビショップが王座の椅子から立ち上がる。


立ち上がったビショップの身長は2.5mを越える位で、筋肉の鎧を身に纏っているようなガッシリとした体型だった。


広場となっているこの場所は、天井も高く横に障害物も無いので、俺はロングソードに剣を持ち替えると、ゴブリンビショップと対峙した。



GUwooo---!


ビショップの咆哮で、戦闘が始まる。


咆哮に威圧を混ぜていたようだが俺には関係無いので、そのまま俊足を使って近付くと、ロングソードで斬りつけた。


GAaaaaa!


筋肉の鎧に阻まれて浅い切り傷しか刻めなかったが、俺に威圧が効かなかった事には驚いているようだった。


俺は、再び距離を置き対峙する。


そして、ビショップからは先ほど威圧を放たれていたので、俺もお返しにと先ほどゴブリンナイトに放った威圧よりも更に強化した威圧をゴブリンビショップに向けて放った。


すると、ビショップが急に震えだし、口から泡を吹きながら後方へと倒れ込んでしまった。


そして、そのまま光の粒子となり消えていった。


「えっ、本気で‼」


その光景に俺自身も、呆気にとられて暫くその場に立ち竦んでいた。

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