第33話 討伐と報告と

「先ずは、こいつを始末しないと始まらないか」


そう小さく呟いた俺はキングに対して強めの威圧を放った。


すると、キングは自分よりも強者と感じ取ったのか、手に持っていた冒険者の亡骸を投げ捨てると、俺から逃げようとして慌てて踵を返した。


俺はそんなキングの行動を黙って見過ごし逃がすような甘い事はしない。


そして俺は指先に魔力を集束させると、背中を向けて逃げる行動にでたキングの後頭部に向けて一筋の光の光線レーザービームを放った。


剣技による戦闘を行っても良かったのだが、キングに殺された冒険者達の亡骸が戦闘の邪魔になるので止めておいたのだ。


そして光の光線レーザービームに頭部を撃ち抜かれたキングは、踵を返して逃げようとした方向へ前のめりに倒れ込んだ。


するとキングの亡骸は光の粒子となり消え、そこには大きな魔石が残されていた。


キングを倒した俺は女性冒険者の方へと向きを変えると、詳しい話を聞く為に自己紹介から始めた。


「俺は、ゴールドランクの冒険者で創作だ。君は...?」


「私は、シルバーランクの冒険者パーティの一員で、エオリアです」


エオリアは自己紹介がスムースに出来るまでは気持ちが落ち着いてきたようなので俺は話をする事にした。


「さっきは突然、頬を叩いて悪かったな」


「いいえ、恐怖で我を忘れて動けないでいたので逆に助かりました」


冒険者としての覚悟はあり、肝は座っているようだな。

仲間だった冒険者達の亡骸を前にしても、ある程度は動揺を抑えられている様子だったからだ。


「さて、話をしよう。これまでの経緯を簡単で良いから聞かせてくれないか」


それから5分程、俺はエオリアからの話を聞いて事の経緯を把握した。


話の内容から察するに、よくある初歩的なミスで扉を開ける前に十分な対抗措置を取らずに扉を開けてしまったようだ。


シルバーランクの冒険者パーティにしては、チョットお粗末な行動である。

そして、エオリア自身は回復要員としてこのパーティに参加していたようだ。


「取り敢えず、後始末をしてここから出よう」

「はい」


俺は先の探索を止めて、一旦迷宮を出る事にした。


俺は先ずキングの魔石を回収、そして冒険者達の亡骸をマジックバッグに収納するとエオリアを伴ってその場を離れた。


俺とエオリアが迷宮の外へ出てくると、既に辺りは暗くなりかけていた。

そして、迷宮の受付窓口へと戻って来た俺とエオリアは今回の事故の報告をする為に窓口の列へと並んだ。


「お帰りなさい、創作さん。初めての迷宮は如何でしたか?」

「自分が思っていたよりも魔物が強かったです」


「それで、今日は何階層まで進まれたんですか?」

「7階層まで進みましたが、そこで事故が有ったのでその報告に戻ってきました」


俺は事故が有った事を窓口の受付嬢ナディアさんに聞かせた。


「そうですか。それでは創作さん奥の部屋に来て貰えますか」


ナディアさんの指示に従って、俺はエオリアを伴って奥の部屋へと向かった。


「支部長、よろしいですか」


ナディアさんが、コンコンと扉をノックしてから部屋の中へと声を掛けた。


「あ~、いいぞ。入ってくれ」


支部長の了解を得て、俺達は部屋の中へとはいった。


「んっ! ナディア、何かあったのか?」


「はい、迷宮の7階層で事故が起きたらしく、こちらのお二人が報告に来られました。創作さんとエオリアさんです」


ナディアさんが、俺達を支部長に紹介してくれる。


「そうか、話を聞こう」


エオリアが先にキングが現れるまでの説明を行い、俺がその後の説明を行った。


「ん~、初めての事例だな。隠し部屋でも7階層では出て来ない奴だからな」


支部長の経験からしても初めての事例らしい。

ギルドの方でも調査は行うということなので、後の事は任せることにした。


そして、報告を済ませた後......。

冒険者達の遺体を、ギルドの方へ引き渡し身元の確認とその後の対応をお願いた。

そして、キングの魔石は調査の為にギルドの方で一時預かりとなった。

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