第30話 陰からコソッと

小物のゴブリン達を倒し終えた上級の冒険者達は、残る8体のギング、クイーン、ビショップ、ナイト、ルーク、の称号を持っているゴブリンとの戦闘に入った。


討伐するこちら側は、怪我をした上級冒険者も治療を終えて復帰しているので、ゴブリンに対して数の上では有利な条件のはずだ。


それから俺達ブロンズランクの後方支援組は、これまで通り戦闘で怪我を負った冒険者達のサポートをする事になっている。


ゴブリンの集落殲滅作戦の集大成となる戦闘が始まってから50分......。


未だ、ゴブリンキングとクイーンは健在だ。

二体は、後方のあばら家の中にいて悠然と手下達と冒険者達の戦闘を眺めている。


それもそうだろう、それは数では上回っているこちらの上級冒険者達が称号持ちのゴブリン達に対して対応しきれていないのだから。


実力不足!


この言葉に凝縮されていると、俺は後方からその戦闘を眺めながら思っていた。


さて、如何したものか...余り戦闘が長引くようだと、後方支援の俺達にまで被害が及ぶ事となるだろう。


そこで俺は、上級冒険者達が討伐しやすいように助け船を出すことにした。



先ずは、ルーク2体の足元に土魔法を使って足つぼマッサージのシートに似たものを生成した。


戦闘中の冒険者からは、小石が不規則に転がっている様にしか見えないだろう。


ルークの2体は、俺の思った通り不規則に並んだ小石のシートを踏んだ途端、バランスを崩してよろめいた。


ポーンの上位種とは言っても、流石に足の裏までは強化されてはいなかったようだ。


そして、その瞬間を見逃さないで討伐した冒険者は大したものだ。


作戦が上手くいった事で、俺は残りのビショップ、ナイトにも同じ戦法を用いて陰ながら上級冒険者達の手助けをしておいた。


そして手下達の討伐が終わり、いよいよキング、クイーンとの戦闘へと場が進む。


しかし、手下達が全部倒されてしまった割には、キングとクイーンの表情には焦りの色は伺えなかった。


何か隠し玉を持っているような、そんな雰囲気を俺は感じ取っていた。


するとキングが突然一際大きな咆哮を上げた。


GAaaaaa-----!


それは、キングが亜種へと変化する合図だった。


キングに続いてクイーンも咆哮を上げると、キングと同様に亜種へと変化してしまった。


俺達の目の前で、戦闘力が1.5倍に引き上げられたモンスターが誕生した瞬間だった。


何故そんな事象が目の前で起きたのか検証する必要はあるが、今は戦闘に集中して置かなければいけない。


上級冒険者達は、自分達の目の前でキングとクイーンが亜種へと変化したことで浮き足立ってしまった。


「「「おいおい! 本気かよ‼」」


前線の冒険者達に動揺が広がって行く。


そして、浮足立ち動揺した者達を見逃す様な相手ではなく......。

一人、一人と上級の冒険者達が戦闘不能の状態へと薙ぎ払われていった。



このままでは、こちら側が全滅に追い込まれてしまうと思った瞬間、俺はロングソードを空間から取り出すと俊足を使い、後方から一気に前線の戦闘へと加わった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る