第28話 お嬢様の回想

私は、シンシア。


領内の視察を終えて、屋敷のあるエバートンの街に帰る途中で盗賊達の襲撃を受けてしまいました。


街まで後少しという事で、気が緩んでいたのかも知れません。


何の前触れもなく突然馬車が横倒しになってしまいました。


馬車の中で和気藹々と話をしていた私達四人は何が起こったのかも分からずに馬車の中で折り重なるように気を失っていました。


どれ位の時間が過ぎたのか分かりませんが、私達が意識を取り戻した時には、盗賊達の棲家へと連れ去られた後でした。


そして縄で縛られて部屋の片隅に座らされた私達のことを、盗賊の男達は嫌らしい眼差しで...、いえ可哀想な物を見る様な目で見つめていました。


何故なのかは、最後まで分かりませんでしたが。



盗賊の男達が私達を閉じ込めた建物の中から出ていった後、時間がどれ程過ぎたのか分かりませんが......。


突然、建物の入口の扉が開き部屋の中へと光が差し込んで来ました。


そして、よく見ると一人の男性がその入口の扉の前に立っていました。



「お前達を助けに来た、冒険者の創作だ。 街道の所で壊れた馬車を見て探しに来たところだ」


「ありがとうございます。 その馬車は私達の乗っていた馬車です」


冒険者だと言う彼の言葉に、私は直ぐに返事を返した。


「分かった。 外の盗賊達は、全員倒したから安心してくれ」


彼が盗賊達を全員倒したという言葉に...、私は安堵した。


そして、縛られている私達の処へと近付いてくると...、彼は。


「じゃ縄を切るから、ジッとしていてくれよ」


そう言ってから、私達4人を縛っている縄を切り解放してくれた。



私は直ぐに解放してくれたお礼を彼に述べた。


「ありがとうございます」


すると、彼は......。


「お礼は良いよ。 それで動けるなら、他にも捕えられている女性がいるようだから解放するのを手伝ってほしい」


その彼の言葉を聞いて私は感動した、そして......。


「はい、大丈夫です。 お手伝いさせて下さい」


と、領主の娘である私は元気に返事を返した。


それから、私達は彼と共に女性達が居ると言う別の建物へと急いで向かった。


そして、囚われていた女性達を解放して、彼が確保してくれた寝床として使う建物へと移動した。


建物へと移動、そして扉を開けて中を確認したメイドのテトとリンが、急に驚いた声を上げる。


「わ~、凄く綺麗に掃除をしてあります」


二人に続いて私も建物の中を覗くと、その綺麗さに驚いて彼に声を掛けた。


「創作さんが、作業されたんですよね」


「そうですよ。 清潔な方が気持ち良く過ごせるでしょう」


「そうですね、お気遣いありがとうございます」


その心遣いに私はお礼を言葉を返した。


そして、私達は迎えが来るのを待っていた。



それから、三日目の朝......。


騎士を引き連れた私の父が、盗賊達が根城としていた集落へとやって来た。


「お父様」


私は、父に駆け寄った。


「お~、シンシア怪我は無いのか」


「はい、大丈夫です」


そこへ、女騎士と二人のメイドも近付いてきた。


「お前達も、大丈夫なようだな」


「「「はい、ありがとうございます」」」


三人揃った綺麗な返事だ。



そして、父は彼の方へと足を運んで......。


「君が娘達を助けてくれた、冒険者の創作君だね」


「はい、冒険者の創作です」


「私はエバートンの街で領主をしているヘンリーだ...よろしくな」


父は彼にお礼の言葉を述べた。


その後、父は直ぐに連れて来た騎士達に号令を掛けて帰還の準備を始めさせた。


この後、色々と話はしたのだが長くなるので割愛させてもらいます。


そして状況の確認が終わり、父が用意してくれた馬車に捕えられていた女性達を乗せると、私達はエバートンの街に向けて出発となった。

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