第22話 横倒しの馬車を見つけた
長老の屋敷を後にして、集落に続く道から街と街を結ぶ大きな街道に出てから2時間、夕焼けが空を朱く染め始める頃に俺は街道沿いに設けられている一つの野営地に何とか辿り着くことが出来た。
野営地で一夜を過ごした翌日......。
エバートンに向けて野営地を出発してから4時間、俺は草原と森の境界線の処まで
街道を進んできたのだが、進行方向にあたる前方の草原の切れ目辺りの場所で一台の馬車が横倒しになって止まっているのを目視できた。
俺の居る位置からすると、まだ事故なのか事件なのか判らない状況だ。
そこで、俺は急いでその場所に向かって馬を走らせた。
そして、俺は横倒しになった馬車の所まで来ると、馬から降りてその場の状況確認を始めた。
馬車を引いていたであろう馬達は、頭部を矢で射抜かれて2頭とも既に死んでいたのだが、襲撃されてからの時間がまだそんなに経ってはいないようで、俺が馬の体に触るとまだ生前の体温の温もりを感じる事が出来た。
それから、俺は馬車の中を急いで確認してみたが、そこには誰も乗っておらず荷物も既に持ち去られていて全て無くなっていた。
その状況を見て面倒事になるのは避けたいが、助けない訳には行かないと思い、俺は直ぐに探索魔法を広範囲に仕掛けた。
すると、今いる場所から東の方向に移動する集団を探知する事に成功した。
「あっちの方角だな」
俺は急いで馬に飛び乗ると、探知した方角へと馬を走らせた。
俺が街道から草原へと分け入った時には道などは無かったのだが、500m位進んだ先からは轍が綺麗に出来た道が目の前に現れた。
この道は、草原を利用して上手くカモフラージュされていたようだ。
そして、現れた道の先の方に移動する集団の反応を探知しているので、俺はそのまま道なりに進んで行く事にした。
15分程...馬を走らせた処で、俺は先行する集団にある程度追いつく事が出来た。
なので、そこからは先行する集団に付かず離れずで、俺の存在がバレないように追い掛けることにした。
30分後......。
遂に、先行していた集団が動きを止めた。
俺は集団を追い駆けて来たきた道から外れて、回り込むように草原の中を進んで行く。
すると、遠くの方に柵に囲まれた集落を目視で確認する事が出来た。
櫓のような物は無いようだったので安心だが、俺は馬から降りて集落に近付く事にした。
そして、少し進んだ先に一本の低い木が生えていたので、馬の手綱をその木に繋いで
休ませておき、そこから先は俺一人で集落へと草むらの中を近付いていった。
俺は集落近くに到達すると、草が鬱蒼と茂る場所を選んで身を伏せながら集落の中の様子を伺う準備をする。
そこで俺は風魔法を使い、遠耳のスキルで声を拾い会話の内容を掌握することにした。
「今朝の獲物は上玉だったよな」
「あ~、でも売り飛ばす前に頭が先に手を付けちゃうんじゃね~の」
「頭の女好きにも困ったもんだぜ」
会話の内容から、やはり先程襲われていた馬車の乗客のようだ。
ただ、何人囚われているのか把握出来ないのが残念だが...
「今回は、領主の娘とその御付きの女騎士とメイドが二人だよな」
「御者の男は既に土の下だからな」
「頭は四人も相手にするのか、ていへんだな」
御者は既に殺されて埋葬されてしまっていたようだ。
あの状況から考えると移動中の御者台で、馬と共に矢で射抜かれて殺されてしまったのだろう。
その後馬車が転倒してしまい、女騎士も抵抗をする間もなく拘束されてしまったという処か。
後は、盗賊達の人数が問題なんだけどな。
移動していた集団は11人、話に出てきた頭が一人、その他に何人居るのか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます