第11話 冒険者の実力は

変異種は、通常の大熊を1とするとその1.5倍位の能力が増幅される。


但し、頭の回転の速さは変わらない。

頭脳明晰とはならないのだ。

所詮、まだ獣だから力だけが増幅される感じだ。


これが、完全覚醒種の個体になると、その能力は10倍位増幅される事もある。

あくまでも元になる個体の能力次第ではあるが。


こちらは、覚醒したことで頭脳明晰になる事が有る。

こうなると、厄介でしかない。

また、力も腕の一振りで直径で3mほどの樹でも簡単になぎ倒してしまうほどだ。



さてさて、今回帯同している冒険者の中での俺の立ち位置は、ブロンズランクと

いう事で、荷物運びの要員としての参加だ。


そして、戦闘に関してはシルバーランクの冒険者3人が行う事になっているので、

先輩方の実力を知るいい機会だと俺は思っていた。


「ブロンズの3人は後方待機だ。 お前ら行くぞ~」


「「おぅ~」」


シルバーランクの3人が、大熊の変異種と戦闘を開始した。


グゥヲォ~


ガキッ...ゴガッ...ガキッン


“ふむふむ、シルバーランクの冒険者はこれくらいの戦闘力か”

俺は、大熊の変異種と先輩方の戦闘を観察しながら、シルバーランク冒険者の

戦闘力の基準を設定していく。


15分後、シルバーランクの冒険者3人が大熊の変異種を倒す事に成功した。


「よっしゃー! ブロンズの3人、速攻でこいつの血抜きを頼むぞ」


その声に従い、俺達ブロンズの3人は血抜きの作業を始める。


その後、何回か追立役が大熊を連れて来たが、変異種はそれっきりとうとう現れ

無かった。


“残念だ‼”



翌日......。


俺は、依頼の受注はせずに一人で大熊の変異種が出た森の中へとやって来た。


探索魔法を使い、特殊な個体を探す。


すると、西の方角に大きな反応を感知した。


俺は、徒歩で1時間ほど掛けて反応を示した場所へと到着した。


“あいつか”


そこに、居たのは。


岩蜥蜴の変異種だった。


体高で1.5m、体長で3.5mほどの立派な成体だ、ただ変異種らしく体色は漆黒に

変化していた。


普通の岩蜥蜴はグリーンが鮮やかで、俺としては可愛く感じるのだが、こいつは

正に漆黒の凶暴なコモドドラゴンのようだ。



さて、どの程度の実力なのか試させてもらおうか。



俺は、ロングソードを片手に岩蜥蜴と相対した。


ガキッ...ガキン...


大熊と違い、外皮が硬いからな。


よっと。


ガキッ...ゴキン...


ふむふむ、ここら辺りか。


俺は、岩蜥蜴が前脚を振り上げた瞬間、前脚の付け根部分の内側から外に向かって

ロングソードを振りぬいた。


ドサッ...


思っていたよりも、あっさりと前脚を切り落とせてしまった。


変異種だとこんなものかも知れないな。



余り、検証の役には立たないなと思い、このまま長引かせると可哀そうなので、

下顎付近から頭骨にかけてロングソードを突き刺して倒させてもらった。



3人掛かりで何とか大熊の変異種を倒したシルバーランクの冒険者の実力は大した

ことはないようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る