第10話 テンプレは避けたい

俺は、無事にキタキツネの女の子を保護する事が出来た。


第1ミッションは、無事にクリアしたかな。


俺は、女の子を肩車したまま街の門を抜けると、真っ直ぐ冒険者ギルドへと

向かった。


ウエスタンドアを開けてギルドの中へ入ると、そのまま受付嬢の所へと行き

ギルドカードと依頼票を提示した。


「あっ、創作さん。 無事に保護して来たんですね」


「あぁ、保護はして来たけどこの子で合っているんだよな」


「はい、そうですよ。

いま親御さんに連絡を入れますので、後ろの長椅子の所か、食堂兼酒場の方で

待ってて貰えますか」


「わかった。

何も食べていないだろうから食堂の方で、何か食べさせておくよ」


「では、お願いしますね」


俺は、女の子を肩車したままで食堂の方へと連れていくと、肩から降ろして備え

付けの椅子へと座らせた。


「何か食べたい物はあるか?」


そう言って、俺は女の子にメニューを見せてやる。


「う~ん、パンケーキ!」


それを聞いて、コックに注文を告げた。


「パンケーキとホットミルク。 それと、珈琲を頼む」


「あいよぉ~」



15分後......。

カウンターテーブルの上に置かれたパンケーキを美味しそうに食べる女の子を

見ながら珈琲に口を付けていると、受付嬢と一緒に親御さんがやって来た。


「創作さん、こちらの方がお姉さんの楓音さんです」


「妹を保護して下さりありがとうございました」


「どういたしまして、こちらは仕事ですから気を使わなくてもいいですよ」


俺達が挨拶を交わしていると...


「あっ、楓音お姉ちゃん」


「夏梨ちゃん、ちゃんとお礼は言ったの?」


「冒険者のおじちゃん、ありがとう‼」


ぐふっ、夏梨ちゃんにお礼は言われたが、何気にダメージが......。


「良かったな、お姉ちゃんと再開出来て」


俺は受けたダメージに負けず、笑顔で夏梨ちゃんの頭を軽く撫でてやった。

多分この時の俺の笑顔は、引き攣っていたと思う。


そして夏梨ちゃんがパンケーキを食べ終わると、姉妹は手をつないで帰って

行った。



三日後......。


俺は今日、大熊の狩猟に帯同してきている。


大熊は獣で、魔物では無いので猟師でも狩ることが可能だ。


ただ、その時に魔物が現れないとも限らないので、猟師は冒険者に帯同を依頼

してくるのだ。


俺達の取り分は、討伐した魔物の素材と依頼料になるが、ただ大熊の個体が大き

くなるとその分が依頼料に対して上乗せになる事もある。


なので、大きい大熊が登場する事に期待を寄せる。


不謹慎ではあるが、背に腹は代えられないのだ。


「お~い! そっちに行ったぞ」


追い込みを仕掛けている猟師から、威勢のいい声が森の中を響いてくる。


そして、俺達の目の前にそいつは現れた。


ガッフォゥ~


「おいおい、此奴は変異種じゃねぇのか」


「本当だ‼ 目ぇ~真っ赤だぜ」


緊張感の無い、猟師達の声が響く。


「頼んだぜ兄ちゃん達」


そう言うと猟師達は大木の根元へと速攻で避難していった。


まぁ~、こちらも仕事だから文句は言わないが、その行動力には目を見張る物が

あった。


その動きを見て......、

“お前らで勝てんじゃねぇ” と俺は猟師達に言ってやりたかった。

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