第3話 シナリオ通りには...?

一月もの間、自分自身の能力を精査していたお陰で、猪君には悪いがサクッと討伐させてもらい、胃袋の糧となってもらった。


初戦闘から三日目、俺は順調に目的の街に向かって歩を進めていた。


そして、ある地点まで到達した時に、目の前の光景に絶句した。


おかしいな? こんな川幅の大河にした覚えは無いんだけど...。


毎年、花火大会を見物にいく隅田川くらの川幅に設定して置いた筈なのに。


目の前のそれは実際には見たことはないが、雑誌で紹介されていた南米のアマゾン川の下流ほどの川幅になっていた。


これ、どうやって渡れば良いんだ。


そして、いかだを造るか、丸太をくり抜いた船を造るか...と、思案をしながらある事を思い出していた。


確か、河の生き物にはアリゲーターやピラニア等の肉食系の生き物を設定してセットしておいたんだった。


この世界では、どんな生態に調整されているのか解らないから、ここは慎重に検討しなくちゃな


予定には無かった状況に戸惑いながらも、川の傍でキャンプ道具を取り出し設営する事にした。


そして、その日は野営地を整備し終えたところで日暮れ近くになったので、猪君の肉を使い獅子鍋を作り腹ごしらえをして眠りに就いた。


翌朝、日の出と共に起床すると、早速丸太船の材料となる大木を調達しに森の方へと向かった。


川沿いの下流の方向に、船に加工するのに丁度良い太さの大木が、森の中から頭を覗かせていたのを偶々見つけていたからだ。


川傍の拠点から歩くこと二時間...。


見えていたのでわりと近くに生えていると錯覚してしまったが、実際は森の中で随分と歩くのに時間を取られてしまっていた。


大木に近づくにつれ、その大きさに圧倒される。


こちらに来た時に、俺が背中を預けていた大木よりは小さいが、アメリカ南西部に生息しているジャイアントセコイア位はあるだろう。


足元に注意しながら、俺は大木に慎重に近づいて行く。


ヒュン、ヒュン......


ビシュッ、ビュッ......


突然、大木の近くに生えている少し太めの木々から鞭のような枝葉が飛んできた。


わっ、うぉっと。


俺は、突然の襲撃に声を弾ませながら退避した。


こいつは、読んでいたラノベの異世界物の中で出てくるトレントか?


加工するには目的だった大木は幹回りが太過ぎるので、魔物であろうトレントの方を討伐して有効利用させて貰う事に決めた俺は、当初の目標を変更する事にした。


まぁ、襲って来られたから討伐は必ずするけどね。


トレントとの戦闘を始めて約一時間、三体のトレントを討伐し船の材料として確保する事が出来たので、空間収納に放り込んで川の傍の拠点に引きあげる事にした。



川の傍の拠点まで往きと同じく二時間かけて戻ってきた俺は、その拠点の惨状に頭を抱えてしまったのだった。

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