お題【祝う】 宴

 料理が山と積まれていた。木の実や果物、果実で作った酒など、山の幸が多いようだった。おれは隣り合わせた男にこっそりと聞いた。

「これはなんの宴じゃ」

 男は答えた。

「珍しい幸が入ったでな、祝いじゃ」

「おれはこの里の者ではない。礼儀作法がわからぬ」

「まれびと、ぬしはそのような些事、気にせんでも良い。ゆるりとなされよ」

 注がれた酒が効いてきたのか、気が遠くなった。

 おれがふらりとすると、宴はさらに盛り上がった。

「失礼つかまつる」

「かまわぬ、これはぬしがための祝いぞ――」

 おれは担ぎ上げられ、卓の中央にどんと置かれた。

 笑う男たちの口元から、牙がのぞく。おれは目を瞑る。

 ああ、珍しい幸とは、おれのことであったか――。

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