お題【窓】 夜祭

 窓の外は深い夜の森。その向こうから楽しげな音楽が聴こえる。

 母様は決して家から出てはいけない、と私に言いつけていた。森には化物がいる、と。

 その夜、遂に私は家を抜け出した。歌や囃子の聞こえる場所を、木の影からこっそり覗き見た。初めて見る食べ物、溢れる明かり、しかしそれ以上に私の目を奪ったのは、異形の者たちだった。

 目が…目が。そして額に…。

 私は家に駆け戻る。母様の言うとおり、森には化物たちが住んでいた。恐ろしい化物。目が二つもあり、そのくせ額には角がなく、つるりとしている。

 私は息を切らせて鏡を覗く。私も化物になってやしないか。一つ目と額に角。そこにいつもの通りの顔をみつけ、私はようやく、息をついた。

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