お題【クリスマス】 君の世界でクリスマスを。

「クリスマス?」

 旅の相棒である彼女は聞き返した。

 僕が飛ばされてきたこの異世界には、クリスマスがない。どう説明したものか逡巡する。

「僕の世界で…すごく大事な人の誕生日を祝う行事、かな」

 我ながらなんと語彙に乏しい説明だろう。

「どんなことをするの?」

「ツリーを飾り付けたり、贈り物を贈り合ったり…」

 言葉は力をなくしていった。元の世界でクリスマスを誰かと祝った記憶など無いに等しかった。クリスマスは、独りぼっちだと再確認するためのイベントだった。

「で、いつなの? あんたの誕生日」

「え?」

「やらなくっちゃ。クリスマス。大事な人の誕生日なんでしょ?」

 つっけんどんに言う彼女の勘違いに気づき僕は――笑うことにした。

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