300字の世界【ファンタジー】

荒城美鉾

お題【嘘】 真実の愛

 嘘をつくといけないよ、お前は言葉を失い、元の姿に戻ってしまうから。

 愛しい人の元へ行きたいと願った私に、人の体を与えてくれた魔女はそう言った。


「君のために素敵な靴を選んだよ」

「まあなんて窮屈な靴かしら」


「今夜のディナーはどうかな」

「うーん、あまり好みじゃないわ」


 人の世界では、嘘をつかずに過ごすことは難しかった。

 彼は悲しい顔をするようになった。

「さようならを言うわ。私はもう誰も愛さないことに決めたの」

 けれど私は、やはり人のままではいられないようだ。最後に嘘をついてしまったから。

 なぜなら、私は今でもあなたを愛し


――1本のマーガレットの花が揺れていた。花言葉は「真実の愛」。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る