閑話 盲目城にて
使い魔だった猫との回線を切り、キキョウはそっと息を吐く。
それを見かねたヨミコは飽きてたようにお茶を注ぐ
「よろしかったのですか、お会いにならずに」
「……あぁ。久々にあの子の顔を間近で見れた。それでいい」
「使い魔越しじゃないですか。どうせ同じ建物なんですから会えばいいのに」
ヨミコの小言を聞き流し、キキョウはフォークを取る。
生ハムとフレッシュチーズのサラダを頬張り、冷製コンソメで流し込む。まだバターも塗っていないトーストにスクランブルエッグを乗せてそのまま噛り付く。
「相変わらず品のない」
「まあまあいいじゃないかヨミコ。キキョウは忙しいんだ」
眉間に皺を寄せるヨミコに対し、キキョウの対岸にマーリンは楽しそうにそれを真似していた。もっとも、これがキキョウのように味が分かるわけではないだろうが。
「それにしてもキキョウ――どうして、あれを隠していたんだい?」
「…………」
マーリンの話を無視し、キキョウは食事を続ける。一向に減ることのないそれは明らかに量が増えていた。
「国のためになるものを隠匿するのは傍付きとして失格じゃないかな、キキョウ」
「……美味しかった。そう伝えてくれ」
そこでキキョウは立ち上がり、口を拭く。
「あれで味が分かるのでしたらよかったです」
ヨミコが手を叩くと、何かによって食器たちが下げられ、ワゴンに乗せられていった。
「またご飯を食べようか、キキョウ。今度はカトレアと君との三人で」
「…………そうですか」
キキョウは曖昧な返事を返すと、ヨミコと共に部屋を出る。
いつの間にか空になっていた皿を前に、マーリンはニコニコと食事を続けた。
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