1-4 盲目城の少女《カトレア》

 翌日、私は珍しくヨヅキより早く起きた。空はまだ薄暗く、天井から積もる光は未だ白い。隣に眠る天使の寝息も安眠へと私を誘う。

 それでもその愛らしい天使がどうしようもなく可愛くてつい眺めてしまう。

 普段真面目で気丈に振る舞う彼女はやはり一つ下の年なのだと理解させられる。そのあいらしい寝顔を記録石で記録したいとも思うが、同時にその一瞬を永遠に私のだけのものにできると思えば、どうしようもなくいとおしい。

 正直目の前の薄桃色に触れてみたいとも思うが、きっと彼女を起こしてしまうと思い自重した。

 そんなヨヅキの寝顔をじっと見つめながら寝たふりを続けていると、不意に部屋が暗くなる。

 この部屋は時間ごとに明るさが変わるようになっていて、明朝の明かりは天井の窓のものだ。何らかの魔術が掛かっているそれは曇って見えなくなることはない。

(……何かに、?)

 暗くなったこの部屋、その原因を確かめようと上を見る。

 そして――

 ――そしてそこには、淡い宝石に深淵を称える碧い瞳が、じっとこちらを覗いていた。

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