第2話 罰ゲーム

「ボタンのかけ違いのような会話ほど見ていて面白いものはない。まくりです」

 カメラに向かってオープニングを撮る。

「まぁ、ウチには言わずと知れたメンバーが俺を除いて5人いるわけですわ。あ、さっきのウチって言うのは妹の事ではないので悪しからず」

 カメラに背を向けて、振り返る。

「まずは扇君こと堂島扇。身長は多分185㎝超えの大型巨人。ドッキリに向かない、反応薄いやつ。でも根がすごくいいの」

 カメラに指を立てて、その数を増やす。

「そして2人目はすなおないい子、受見直生ちゃん。スレンダーで可愛い、と評しておいて下さい。ポジション的にはみんなのお姉さんかな?」

 立てる指が3本になる。

「そんでもって我が妹の島田うちこと、通称うっちゃん!(呼んだことない)。学年は一緒なんですけどね、双子じゃないんですよ。え?留年?一浪したのかって?違う違う。俺、四月馬鹿。うち、ひな祭り生まれなんだぜ?はぁ…父さん母さん、よくやるぜ…」

 首を振りながらやれやれとした後に指を立てる。

「そして4人目はサークル内のカメラワーカー兼マスコット、竜巻真美。自称身長150㎝の赤縁のメガネっ子。基本無口。かわいい。愛でたい。父親的な目線で。俺と同じ2年生。一人称が『僕』なのは兄妹も従兄弟もみんな男連中で、その中で育ったからと言っていた」

 そして最後の親指を立ててカメラに手を突き出す。

「そして最後はこのサークルをまとめ上げる会長こと新藤季莉也!おっとりと優しい性格で、決めるときにはキメるイケメン(俺目線)。だいたいいつもニット帽をかぶっているため、俺の中では10円はげでもあるのではないかと推察している。糸目の3年生。さっき言ってた竜巻となぜかいつも一緒にいるんだが、本人たち曰く付き合ってはないらしいが、はたして……」

 腕を組んでカメラに背を向けながらカメラから離れていく。

「そして忘れてはいけないこのお方、そう、島田まくりがその人である」

 そういいながらカメラに振り返り、親指で自分のことを指指す。

「頭脳壊滅、スポーツ平凡、才徳兼備を目指している俺こと島田まくりは身長166㎝ながら体重は76㎏という破格のスペックを備えている御仁である」

 カメラに駆け寄り、顔面アップにする。

「現在彼女募集中。よろしく」

 そういって、カメラを止めた。


「ねー、うちちゃん?」

「ん?なに?」

「今日の撮影って、なにしてたの?」

「あぁ、あれ?ほら、兄貴ってさ、実は結構根暗で恥ずかしがりなところがあるんだけどさ。この間のゲーム、ほら、うっぴーあったじゃん。あれで負けたから罰ゲームで自己紹介を過剰演出して投稿することで決着がついたのよ」

「ほぇー」

「んで、今日は扇と一緒に撮影中ってわけ」

 二人はそういいながら楽しそうにタピオカミルクティーを飲んでいた。そして一方のサークル室内では、orzとなったまくりの肩に、無言で優しく添えた堂島が、カメラを片手に再生ボタンを押していたのであった。

「—――体重は76㎏という破格のスペックを備えて―――」

「やめてっ!」

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