ー3ー tri

視界がボヤボヤする。


辺り一帯が白く、ボーッとしている。

だんだん意識がはっきりしてきた。


「…何なんだこりゃ?」


いつもと違うことはハッキリとわかった。


今までは森、山、雪景色、音に包まれた世界…等

どちらかというと幻想的な世界が多かったのだが今回は違った。


天井が高く、真っ白でそこそこ広い四角の部屋。

何より大きな違いは人がいたこと。

それも一人ではなく百人ほど。


「羽…?それに…角か?」


百人のうちの数名は固そうな皮膚をしていたり、角や羽が生えている者もいた。


「うわぁ!なんだお前の腕!!」

近くにいた男が声を荒げた。


「…俺のことか?ん!?なんじゃこりゃ!!」

腕を見ると俺の腕が人の腕の形をしていなかった。

普段の二回りくらい大きく、肩から腕全体にかけて獣のような腕になっていた。

茶色の固そうな毛が生え、手の甲辺りに巨大な爪が付いていた。

腕の先に掌があり、大きな爪は掌とは別で付いている。


右手で左腕の爪を触ると触られている感覚があった。


「…今回今までと何もかも違うぞ?どうしたらいいんだ?」


周りも困惑している様子だった。



突然ー


部屋の真ん中に強い光が差した。


感じたこと無い気配ー


みぞおち辺りがゾワッとするー


全身の肌がサブイボを立て鳥肌が立っている。


その正体が10秒後に本能でわかった。


ーードォォォォォオオオオオンーー


自分の身長の20倍ほどあろうかという椅子と30倍ほどあろうかという“何か”が降ってきた。


『ルオオオオオオオォォォォォォオオオォ!!!!』


犬のような骨格に米噛みから巻いた羊のような角、口元からは収まりきらないキバが出ていた。

紫色のような黒い肌、筋肉質な体のその化物は椅子と共に降ってきて、座ったまま雄叫びをあげた。


先ほど全身が感じたもの。

それは強烈な殺気だった。


『第一の試練だ。』

化物は濁った低い声で話した。


「…!!??」


その場にいた人間は全員驚いた。

化物がさっきと打って変わって落ち着いた様子で話始めたからだ。


『今から試練を始める。第一の試練だ。長い時間待っていたんだ。楽しませてくれよ。』


「試練?」


『今から俺に傷を一つでも付けたらお前たちの勝ちだ。俺はここから動かないが殲滅させるつもりだ。全員でかかってこいと死ぬぞ。5秒後にスタートだ。5…』

化物は

カウントを始めた。


(…試練…?…それに何だこの化物は…?)


『…4……3…』


(…傷をつけたら勝ち…?もし誰も攻撃しなければどうなるんだ…?)


『…2……1…』


「…う、うわあああぁぁあああ!!!!」

カウントが0になろうかという時、俺の隣にいた男が発狂した。



―その瞬間だった―



「……!!!!!!!」


椅子に座った化物から物凄い速さで何かが飛んできた。


俺が振り向くと隣で発狂した男の腹を化物の腕が貫いていた。

即座の出来事に声も出ない。


その速さたるや矢の如し―










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