ー2ー du

学校の駐輪場に自転車を停め俺と真平は教室に向かった。


二年の教室は三階にある。


二階に職員室があり、階段で担任の塚本と出くわした。


「…おー間宮と飯島。良いところで会ったなあ!!これ手伝ってくれや!!」

塚本は関西弁の使い手である。


「つかもっちゃんも毎年大変だな!」

真平が塚本を茶化す。

塚本は大きな段ボールを持っていた。


「アホ!塚本先生言わんかい!茶化してんとはよ手伝ってくれ!段ボール三個も運ぶんしんどいねん!」


「仕方の無いおっさんだなー」

俺と真平は残りの段ボールを持った。


「俺はまだ29や!!おっさんちゃうわ!!」

塚本と三人で教室に向かう。


塚本は生徒から好かれている。

生徒に対して同じ目線で話しかけ、対等かつ真剣に取り組んでくれる。


「教壇の後ろに置いといてくれ。助かったわ有り難う。」

教室に着くと荷物を降ろした。


すぐに朝のチャイムが鳴り、HR(ホームルーム)が始まった。


「みんなおはようーほな今日の説明やけどやなー」

塚本はHRを始めた。


「今日はお待ちかねBCの日です。後で各自自分の出席番号のセット取ってくださいねー。」


このセットとというのはBCを行うのに必要な器具で、さっき持ってきた段ボールの中に入っている。

器具といっても見た目はサングラスとヘッドフォンが一つになったような形で大きくはない。

BC実際にその器具を装着し、音と映像を観賞するだけ。広々とした山や森の中で10分~15分いるだけのことが多い。

人により光景や体験することが違うらしい。

ものの十数分だが、一旦終えると“外の世界”では1時間経っているので学生からすると美味しい授業という感覚でしか無かった。


一通りBCの説明を塚本が終えた。


「…とまぁBCの説明はこんなもんとして。今日は9時30分からだそうや。」

BCは全国一斉に行われる。装置に対して電波が発せられ、一斉に繋がる。


映像を見せられているというよりそこに引き込まれる。BC中は装置を外そう等考えないほど集中している。


「間に合わんくて先生のせいにされたないから早いとこ配っとくわ。自分の出席番号のやつ取れよー」

塚本は席の前から段ボールを流して行った。


「つかもっちゃんは俺らがこれやってる間何してるの?」席の前の方にいる男子が聞いた。


「せやから塚本先生って呼びなさい!」


「寝てるよ!私去年一緒のクラスだったとき起こしたもん!」その近くにいた女子が答えた。


「こら、池田!言うな!みんな取ったらはよつけて待っとけ!」


全員の元に装置が行き渡り、時間を待つだけとなった。


「これ正直怖いよな!」

後ろから真平が笑いながら話しかけてきた。


「もしBCが始まって目が覚めなければどうなっちゃうんだろな」


考えても見なかった。

しかしこの時は気にも止めていなかった。


「ーーろそろーはーーーぞーー」


塚本の声が遠くなる。

首筋当たりがゾクゾクする。

キーーンと耳鳴りがするような感じで意識が遠くなる。


この感覚何年経っても慣れないがすぐにわかった。







ーーー始まったーーー





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