ー1ー unu

いつものように目が覚めた。


携帯電話から流れる激しいロックのサビがベッドの下から鳴っていた。


重い腰をあげ、ベッドから降り、着替えてリビングに行くと母親が朝食を作ってくれていた。


「明日香、先に顔洗ってらっしゃい。今日はBCの日でしょ。」


「はーい。」


俺の名前は飯島明日香(いいじま あすか)。どこにでもいる高校二年生だ。

大学院にいる頭のいい兄と中学三年の弟がいる。

母親は専業主婦で父親はサラリーマン。どこにでもある家庭だ。


「かーさんの子どもの時はBCって無かったんでしょ?」

顔を洗い終えた俺はテーブルに置かれたハムエッグと食パンを頬張りながら話す。


BCとは“brain's evolution”の略で脳にきっかけを与え、成長の促進を行うプログラムである。

10年ほど前から小学生~高校生を対象に年に一度一斉に行われる。

名前は馬鹿馬鹿しいが、実際に平均的な学力は上がっているらしい。

成長過程で定期的に行うことで効果が生まれ小学生以前の脳だと負担が大きく、18歳を越えると成長はほとんど終わっているので意味を成さないそうだ。


「私が子どもの頃はやっとタブレットでの授業が広まり始めたって感じだったのよ。便利ではあったけど一個人のやりたいことが尊重されるにはリスクが高いような時代だったからね。」


「ふーん。」


朝食を済ませ、学校に行く準備をする。


締め切られた部屋がある。

弟の部屋だ。


「咲夜、お前今日はBCの日だから学校行けよー!」


「……」


「じゃあ行ってきますー」



家を出て自転車に乗り、学校に向かう。

家からは20分くらいで学校には着く。


「あっ!」

一人の人影を見つけた。


「おっす!」

俺は声をかけた。

黒色で少し伸びた髪の前髪はいつも目にかかっている。

「おう、明日香!お前が後ろからなんて珍しいな。うんこでも気張ってたんか?」

彼は間宮真平(まみや しんぺい)。俺の幼馴染みで気づいた頃にはいつも一緒だった。


「ちげーよ、お前がいつもより早いんだよ!」

たわいもない会話をしていると後ろから丸坊主の男が走ってきた。


「よう、間宮、飯塚!!今日はBCだぞ!!学校ちゃんとこいよ!!」

そういって男は追い抜いて行った。彼は田中誠(たなか まこと)。野球部でもなく、陸上部でもないがなぜか鍛えている。


「…今学校に向かってんだろ。あんな馬鹿でもBCは意味あんのか?」


全くその通りだ。


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