インターバル 五分ってとこか
弱キャラで強キャラを食うのは難しい。相手はこっちの弱点を知り尽くし、ほぼ完ぺきな立ち回りで体力を削って来る。これに勝つには、ジャンケンを何回も連続で勝つ程の読みの力と、転がり込んだチャンスを絶対に逃さない集中力と技術力が必要だ。
だからこそ、虎子は弱キャラを使うのを好んだ。それを乗り越えた時の快感を幸律虎子は愛していたから。
ダンも、ハートも、トゥエルブも、炎邪も、ハート様も、伊達も、ビクトルも、ヒエラルキーの最下層に属する持たざる者だ。だが、虎子が扱えば、勝利と言う名のドラマを演じる役者となる。いつしか、ゲーマーの中では彼女の存在そのものを奇跡と呼ぶようになった。
そして今、彼女の目の前で瀕死の男が殺戮兵器のような格闘家と戦っている。
「五分(ごぶ)ってとこか」
そう独語して、虎子は再び異界へと歩を進めていった。
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