24.薄蒼と白
夜明けが訪れたばかりの雪原、晴れ渡っているはずの空からは、煌めく雪片が幾らか。
その薄蒼い雪の影を見よ、張り詰めた空気の音なき音を聞け。
小さな影が二人ぼっち、広大な白の原を行く。さくさくと靴先が雪をかく音、ぎゅっぎゅと靴底が雪をふみしめる音。
まだ日も昇り始めたばかりだと言うのに、彼らは街を出ていくところだった。
「ねえ、僕ら何処に行けばいいんだろう」
少年がつぶやくように尋ねると、
「何処へだっていいのさ。ここ以外なら」
もう一人の少年が半ば捨て鉢になったように返す。
彼らに帰る街はもうない。また日が沈む前に、わずかな荷物を持って別の止まり木を探さねばならなかった。雪原で夜を迎えることは到底出来ないのだから。
「ねえ、僕ら……」
「ん。」
「うん」
募る不安にせき立てられるように言いさした少年に、もう一人が手を差し伸べた。言葉少なな彼の、手袋の手を握って、少年はいくらか落ち着いたようだ。
空気に響く音なき音。踏みしめる足元の薄蒼い影。口元に浮かぶ白い息。
彼らはただ歩いていく。
日が昇って程なく。煌煌と光っていた雪原には影がさし、瞬く間に一面を真っ白な吹雪のカーテンが覆っていった。
後には足跡さえ残っていない。
彼らの行先を知るものはいない。行く末を知るものもまた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます