19.銀の金糸雀
金色の時を謳っている。銀色の空を奏でている。金糸雀、金糸雀、番の鳥よ。
押し黙ったままの金糸雀は、最初ただの一羽で鳥籠にいた。
「一羽だと鳴かないんだとか」
綺麗な金糸色の羽を、ぴくりとも動かさない。どこか遠くを思うように、飛んだこともない外の空を見つめている。動くことさえあまりなくて、本当に静かなままだった。
「なんだか気の毒に思えてしまうね」
「もともと、鉱山用のを貰ってきたものだものね」
「悲観主義になるのもやむなし、か……」
人に危険を教えるスケープゴートとしての役割が、小鳥の心を閉ざさせたのかどうか、そんなことはわからない。
ただ、一羽では寂しすぎるだろうと。人でさえもそうなのだから、鳥もきっとそうだろうと、エゴイスティックにも考えて、番にすることにした。
それから数日後の、空がさめざめと銀色と金色を帯びて明ける頃に、鳴き声を聞いた。
「あら」
「おや」
私たちは顔を見合わせた。小鳥は今や、歌うのこそ当然なのだとばかりに、夜明けの歌を歌っている。
金色の時を謳っている。銀色の空を奏でている。金糸雀、金糸雀、番の鳥よ。
私たちと同じように愛のうたを歌っておくれ。
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