15.キレ切れ

 ギザギザした所を慎重に撫でていった、滑らかな所を一息に撫できった、不思議だね、僕の指をざっくりやったのは滑らかなところだなんて。


 彼女は尖った人だった。けれどその尖りが愛おしくて、僕は彼女に触れていった。注意深く。傷つけないように、傷つかないように。

 彼女もそのことを察していた。察しつつ、彼女なりに注意深く僕と接していた。傷つかないように、傷つけないように。


 しくじったのはなんでもないような所だった。滑らかで棘などないようなところに、ついと触れたら、触れて撫でたらざくりと切られた。

 こぼれたミルクは決して元にはかえらない。

 僕は彼女と自分を交互に見た。半ば呆然としていたかもしれない。

 彼女は眉根を寄せて、きっぱりと告げた。


「あなたのせいよ。」


 いたたまれない。罪悪感。羞恥心。劣等感。

 花のような唇からこぼれた断罪のような言葉がリフレインする。


 僕のせい。


 ああ切って。

 切ってしまえ。

 どうか一息に。

 息絶えるまで深く。

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