09.長靴を履いた猫と

 ヒールを履いてめかした彼女が、長靴はいた子猫と踊る……ダンスホールの真ん中で!


 闖入者は飛びっきりの美人だった。青い目に白いふさふさの毛並み。何しろツヤが違う。そのままだって素敵な足には何故か長靴のような赤いソックスを履いていて、それがまた目を惹き付ける。

 一方彼女も飛びっきりの美人だった。青い目に金色の巻き毛。猫に負けず劣らず蜂蜜を塗ったような艶。赤いヒールを履いていて、それがまた目を惹き付ける。なんて長い足!


 ホール中の人の目が二人に釘付けだった。

 スポットライトだって、二人だけ照らしていたし、音楽は彼女たちのために奏でられていた。

 その真ん中で、人目の強いる緊張感など知ったものかとばかりに自由に二人が踊る。

 時に彼女は猫の手を取り。時に猫が彼女の上を駆け回り。 ああ爪を立てることもない。なんて器用!


 長靴を履いた猫とヒールを履いた彼女のダンスは夢のようだった。曲の終わりとともに、猫はダンスホールの真ん中から、ひらり窓の縁に飛び乗って、夜の中へと消えていく。気まぐれ猫は、長靴片方を落としていった。彼女はそれ見て笑ってた……ダンスホールの真ん中で!

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