08.背中に夕焼け
夕焼けの町並みはなんだか少し寂しそうで、仕事帰りの背中はちょっとしょぼくれてて、でも綺麗な夕焼けと適当な店で飲んだラムコークで、それでいいじゃないかって気にもなる。
今日の夕焼けは――陳腐な言い回しになるが――まるで本当に空が燃えているような物凄いものだった。何もかもが橙色の世界で、何もかもが長い影を背負っている。
仕事帰りにはちと刺激すぎやしないかい。今日はこの所でいっとう疲れたおお仕事だったんだと文句を言うだけ、バカバカしい夕焼け。見晴かす夕空はえらい人間様もそうでない人間さんのこともおかまいなしだ。
夕焼けを映して、運ばれてきたラムコークがほんの少しだけオレンジ色をしてる。氷もいい感じにプカプカくつろいでる。
ガブリと噛み付くように、ぐびりと大口を開けて一口飲んだ。
綺麗な夕焼けを飲み込んでやった。氷もガリガリ噛み砕いて得意げ。
あまりの飲みっぷりにか、近くのサラリーマンが目を丸くしてる。
腹の中も夕焼け飲んで少し綺麗になるかなあってことさなんてしょうもない話して、つまらないジョークで大笑いして。
今日はなんだかそれでいい気がした。
帰る背中に月を背負って。腹の中にはちゃんと、ラムコークと夕焼け抱えて。
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