02.モノクロオム

 時には黒いベールをまとって、時には白いドレスをまとって。どうしておなじ姿の必要が?と問う。それこそが、変幻自在。

 モノクロオムの彼女は変幻自在。いくつもの姿を持ち、いくつもの装いをし、いくつもの言葉を紡ぐことを人はひどく不思議がる。


 ――何故?

「そんなに人ってコロコロ変わらないよ」

 ――あなたの隣で笑っている彼の別の顔を見たことあるよ。

「腹黒とかそういうのないし」

 ――光があったら、影ができるでしょう。影がないほどの光はもう光とわからない。

「もう落ち着かないと、思春期とかじゃないし」

 ――ひとは

 ――ひとはいつでも、同じ姿はしていないよ。


 変幻自在。時に黒いベールをまとい、白いドレスを纏う。時に黒いドレスをまとい、白いベールを纏う。

 モノクロオムの彼女は不思議そうに微笑しながら、いつでも問いかけている。

 ――何故?一つに決めつけようとしているの?

「そんなの、あなただって」


 誰もがモノクロオムの彼女をも決めつけようとしている。ひとつきりの枠に押し込めてしまおうと。

 だから。


 ――あなただって?みんな決まってそういうの。でもそんなことは、しらない。

 やっぱりねと。モノクロオムの彼女はふわりと笑い、白の中へ、あるいは黒の中へと溶けてしまう。

 ――あなたは本当にひとつしかいらないって言うのね。決めつけるのね。

 悲しそうな声が響けば、問うた相手は本当に〝ひとつきり〟に押し込められてしまう。


 ひとつきりでは生きては行けないのだ。

 ひとは。

 生きては行けないから。

 ――、。


 ――光と闇があるように。

 彼女は寂しそうに笑うのだった。

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