第五話 夏の可惜夜②

約束の時間になったけれど、一向につかない。迷ってしまったようだ。那智に連絡を入れ、来た道を引き返す。

もう、進むのが遅いことは諦めて、大人しく周りの大人たちに着いていく。

折角、頑張って服を選んだのに、その服は汗でぐっしょりと濡れていた。


ようやく、集合場所に着く。いつも髪をゆるくまとめているので、下ろすのを見るのは、これが初めて・・・・・・ではないにしても、違和感があった。

カーキのセットアップが、サイドにつけた金色のピンによく似合っていた。


「おしゃれだね」


その声は、近くの宗教団体の演説にかき消された。



始まるまでの間、夕飯確保も兼ねて屋台をのぞいていると、桜を見かけた。結局、家族と来ていたようだ。話しかけようと思ったけれど、人混みに流されて、それは叶わなかった。

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