第21話 箱開く

「斎藤永愛さんで間違いないですか?」


「はい。」


 ここの会議室に来るのはいつぶりであろうか?

 相変わらずこ汚いビルで、昭和レトロ感満載の汚い会議室だ。

 折りたたみ式の長細いテーブルは角が削げ落ち、パイプ椅子は座面から綿が出ている。

 そんな気の利かない場所に、国のお役人が一介のJKにご用事など、接待先のガールズバーか何かと勘違いしているのではないだろうか?


 お硬い仕事で、理想論大好きなクソ役人のせいで、こちとら商売上がったりである。


 とっとと失せぇや。うっとおしい。


 そんなことを考えながら、マツリは役人がしていく質問に、ウンウンハイハイと答えていった。

 質問も、答えたからと言って問題のあるものじゃなかったし……。

(新田恵里菜が押し付けた? イヤ、ウチ捨てたし。箱のストーキング? 意味不やわ〜。の事聞いてきてるだけ……。)

 そして、最後に、


「アンケートのご協力を……。」


 と、紙を一枚差し出してきた。その時、マツリは自分の目の前にいる役人を、心眼で読み込んだ。すると、


『どうだ? 答えるか? 一般人には白紙のはずだ。』


 コイツ……。


「アンケートって? 白紙に?」


 マツリは紙を役人に突き返した。


「あぁ。すみません。間違えたみたいです。」


 クソが……。白々しい。


 役人は、もう一枚紙を取り出してマツリによこし、今度こそマツリはサラサラと適当にアンケートを書き上げた。

 それから、役人はアンケートを受け取ると、


「それでは、新田恵里菜さんから受け取ったという箱、早速ですが明日お渡しいただけますか?」


「あぁ……ハイ。」


 この時、小堺に箱を渡せばよかったと、マツリは後で死ぬほど後悔した。


 が、


 翌日の晩の6時過ぎ……。


 ビニール袋に入れて持ってきた(小堺のオッサンには「せめて紙袋にせぇよ!!」と、怒られたが……。)

 そして、あの箱を出した途端……


 かこッ……がらんっ――――。


 箱の蓋が、浮き上るように開いた。


 投げても蹴っても、どんなに手荒に扱っても壊れるどころか、蓋すら開かなかったのに……。


 ただの蝶々結びの紅い組紐が緩んで開いた。


 クソがっ……!


 マツリは顔をしかめ、人目もはばからずチッ!!!と、思い切り舌打ちをした。

 土御門は驚き、マツリを見た。


「キミは何者だ……。」








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る