第18話 箱

 新田恵里菜。マツリの同級生。

 彼女は自他ともに認める、スクールカースト上位のゆるふわ系女子で、いかにもJKらしい自己中心的な性格をしている。

 そんな彼女が、家の倉庫で謎の箱を発見した。

 漆塗りの木箱だがすごく古い物で、


 ”コレ売ったらヤバイ! 絶対お金になるんちゃうん!?”


 と、軽い気持ちで質屋に持ち込んだものの……当然、未成年ということで断られた。


 それからだ。異変が起き始めたのは……。


 まず、神主の格好をした人が現れては消えを繰り返した。

 彼女の両親もバッチリ見てしまったので大騒ぎになった。

 そして、地震もないのに家が揺れたり、電化製品がいきなり壊れたり……、


 怖くなって、箱を捨てようと思ったのだけれど、なんとなく、それも怖い。

 どうしようかと悩んでるうちに、学校にまで持ってきてしまった。

 ふと、休み時間に斎藤さん(陰キャで目付きの悪い娘。)を見て思った。


 “そうや!

 アイツ……ボッチやし、あたしからモノあげたら、喜ぶんちゃうん?”


 “陰キャって、モノやっただけで勘違いしてウザいけど……こういうとき便利やわ〜♪”


「なぁなぁ♪」


 斎藤さんは振り返らない。


 “コイツっ……💢

 あたしが話しかけたってるんやからシカトすんなよ💢💢

 調子こいてんちゃう??💢”


 “まぁ、普段誰も声かけんし……。

 自分に用事あるとか、思ってへんだけかもせぇへんし……。

 ガマンガマン。”


「斎藤さん! シカトせんといてぇよ! 凹むやん〜。」


 すると斎藤さん、もうメッチャ不機嫌に振り向いた。


 “ホンマ、ボッチのくせに調子のって……💢💢

 あり得へんわ〜っ!!

 でも、ガマン。”


「あ、あんなぁ……斎藤さんって古いの詳しそうやし(多分)。コレとかどう?」


 例のあの箱を出した。


「捨てたら?」


 はっ!?


「イヤ……でも……。」


 “あたしが! アンタみたいな陰キャにあげんねんで!?”


 “何よその言い方!!”


「別に、アンタと仲良くしいた無いんやけど?  アンタには何か理由があんの?」


 斎藤さんは見抜いたようにギロっと睨んだ。


 彼女のこの顔、恵里菜は大嫌いだ。


「なっ! 何でよ……。斎藤さん。普段からボッチで、同クラでそういうのアカンやろ?」


 キレそうになったものの、もてるネコを総動員して被った。


 “捨てられるんやったら、もう捨ててるわっ!! この陰キャ!!”


 ところが、斎藤さんは席から立つと、箱を引っつかんだ。


 “え……? 結局もらってくれるの? 

ラッキー……。”


 と、楽観したのも束の間、斎藤永愛さいとうえあことマツリは、箱を教室の窓から放り投げた。

 あまりの出来事に恵里菜は呆然としたが、マツリは


「ほな帰るわ。」


 と、にべつもなく去って行った。

 恵里菜はハッとして、マツリが放った箱を確認した。


 多分、グラウンドに落ちてるはず……。


 だが、ない!


 まさか……イヤイヤイヤ! 思ったより遠くにいっただけ!!


 恵里菜は、箱をわざわざ探すのも嫌で、家に帰った。不安でしょうがなかった。が……。

 怪異は収まった。

 拍子抜けするくらいにアッサリと……。


 そして、翌日から斎藤さんの機嫌が、物凄く悪い。


 後ろめたさがないわけじゃなかったけど……。

 恵里菜としては少しいい気味だった。


 それから暫くして、斎藤さんは通常運転に戻ったけど……。


 近寄りがたさが増した。


 あの箱、きっと斎藤さんの所に行ったに違いない。


 何があったとか、気になるけど……絶対に、聞かないほうがいいと、思う。







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