第12話 僧正坊、怒る

 本郷玲王の依代を使い告白に成功した楓。


 その後、バイトを掛け持ちし、お金を貯め、独立を目指している。


 そして、本郷玲王本人が以前、通っていた専門学校は美容師の学校で、あの時代錯誤の激しさでは流石に合わなかったため、休学から退学にした。


 楓は彼女と本気で結婚まで考えているため、できるだけ早く、安定した収入を得るため、警察官を目指すことにしたらしい。


 彼女も、そんな真剣な楓を支え、仲良くやっているようだ。


 楓はリア充を満喫し、浮かれに浮かれ……。

 大事な事を忘れていた。


 そして、マツリはそのこと解っていたが、


 それからしばらくして、天狗の大群が大阪城を中心に渦を巻いて覆い尽くした。


 辺りは台風のような暴風で、世間はやれ避難、原因不明、竜巻?、瓦が飛んで怪我人が! と、大騒ぎである。


 この大騒動となって、楓はやっと自分の親父、僧正坊に何の話も通していないことに、やっと気づいた。


 そして、実は、彼女である本田未来に、正体が天狗であることも話していない。


 未来には自分の本来の姿が見えない。

 だから、説明のしようがないというのもある。が、何より怖かった。


 本当の自分を知られたら嫌われるのでは?


 という疑念が拭いきれない。


 しかし! 未来の安全に代えられぬ!


 楓は意を決して、自分の正体を打ち明ける決心をし、またマツリに会いにいった。すると、


「まぁ、来る頃や思とったで。」


 とニヤリと笑った。


 このしたり顔、まさか……。


「マツリ殿。お主、まさか……。解ってのことか!?」


「解っての事って、何の事やろな~?」


 と、はぐらかしながら、ニヤニヤ笑うマツリを見て、楓は、


“抜かった!!”


 と自らの至らなさに恥じた。


「まぁ、そんなことより。僧正坊ジジイをどうにかせんとなぁ?」


「某は、意図せず、お主の思惑に乗ってしまったのだな? そもそも、某の我儘が招いたこと、それは良い。」


「おっ! 言う事が男前やな? 流石天狗。」


「調子の良い。そんなことより、先ず……未来に、某の正体を明そうと思う。」


「それで? 僧正坊ジジイは?」


「それは某が話をつける。故にその間、この、本郷玲王の体を頼みたい。と言うか、お主! 親爺殿をジジイ呼ばわりするでないわっ! 御山の主ぞ!」


「ハイハイ。じゃぁ先ず、彼女のとこ行かなな。」


 そして、


 本田未来は、自分の彼氏が、それも初彼が、

 若い、どう見ても(ブレザーの制服着てるし)JKを連れて、この暴風の中帰ってきた事に、

 軽くパニックを起こした。


 別れようとか言われるのだろうか?


 やっぱり若い娘が良かった?


 オバサンだもんね。まぁ、ブス寄りだし……。


 軽く絶望してると


「何でもいいから、はよ家入れてくれへんか?」


 と、JKにせっつかれた。


「あ、ハイ。どうぞ。」


 って! 何萎縮してんのよ!? えぇ年して!


 と、本田未来は自己嫌悪しながら、結局お茶とお茶菓子まで出してしまった。

 そして、皆が席につくとJKが


「さて……部屋暗せなアカンな。」


 とカバンから暗幕を取り出して……


 え?


 あたしの目バグってるのかな?


 てっ、手首が……JKの手首が、暗幕掴んで宙を舞っている。


 手首が、窓に暗幕を貼り付けている!?


「手、手首……痛くないんですか?」


「別に?」


「あ……そ、そう。」


 か会話がおかしい。


 何から突っ込めばいいのかな!?


 救いを求めて玲王クンを見ると、何だか難しい顔をしている。


「れ玲王クン?」


 すると、本郷玲王は改めて、未来の方に向き直って言った。


「今から見せるもの、信じられるものではないかも知れない。それでも……こうなった以上黙ってはおけない。未来を想う某の気持ちは、嘘偽り無いことだけは……どうか、信じて欲しい!」


「玲王クン……。」


「さて……準備でけたさかい、イチャこくんは後にしてもらおか。」


 と、JKから唐突に言われて、顔から火が吹く思いだ。


 見ると、窓という窓に暗幕が貼られ、ちゃぶ台には蝋燭が一本立てられている。


 そして、JKは未来の手を取って座り、その対面に玲王クン……。


 何が始まるのだろう……。


 不安に思ってると、いきなり電気のスイッチが切られ、蝋燭がボウっと灯った。


 すると、玲王クンが居るはずの場所に……


「……て……天狗??」


 体が大きくて、山伏の格好で、鼻が大きくて、背中に、背負ってる何かは羽?


 そして、天狗が喋る。


「これが、某の真の姿なのじゃ。騙すような真似をして、すまなかった。」


 なんと言ったら良いのか……。


 まさか過ぎる展開……。


 彼氏は……天狗だった。









































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