第9話 奇跡の裏で2

 本郷 玲王、

 20歳、

 男性、

 専門学生、

 バイト、アパレル店員、


 彼は子供の頃からお調子もので、やんちゃ気味な性格であった。

 それを両親の溺愛で助長され……。

 まさか、こんなことになるなんて思っていなかっただろう。


 呪いをかけられたのだ。


 かけた相手は……昔、彼がイジメた少女。


 最初、彼の両親は呪われているなど、思いもよらず、心療内科や脳神経内科をはしごしたが、


 原因不明。


 真夜中にいきなり甲高い笑い声をあげたり、排泄物を服や靴に塗りつけて徘徊したり、いきなり自分自身を殴ったり、毛虫やゴキブリを食べたりする息子……。


 もう手に負えなくなっていた。


 どうして呪いと分かったのかというと、

 元いじめ被害者の両親が訪ねてきたからだった。


 どうも、そのイジメ被害者の娘さんは、自殺したのだそう。


 彼の名前を、本当の本当に隙間もなく書き綴ったノートを抱きながら、お腹を深々と刺して。


 そして、その時、改めて息子がしでかしたイジメの詳細を話され……聞きたくもないが……。


 当時小学生高学年だった彼女に、

 犬の糞を靴やランドセルに入れたり、

 教室に出たゴキブリを無理やり口に入れたり、

 毛虫を給食に入れ、無理に食べさせた上、その時の吐瀉物を食べさせた。

 暴力まで……。


 当時、子供のイタズラと軽く受け止めていたのが、どうも今の息子の異常行動と似通っているような気がして、恐ろしく怖くなった。


 そして、


「最近……娘は立ち直りつつあって、でも、娘が、死を選ぶ前……息子さんと会ったようなんですが……何か、心当たりは……?」


 そう言われて、思わず激高し、彼の両親は、彼女の両親を追い出した。


 怖かったのだ。


 そして、気がつけば、部屋に閉じ込めていた息子が幽霊のように立っており、こう言った。


「私のお母さんとお父さんなんて言ってた?」


 これを聞いて気が狂いそうだった。

 だが、もう、疑いようがない。

 息子は、彼女に、復讐をされているのだ。


 勿論、直ぐお祓いに連れて行った。


 しかし。


「すいませんが、境内の立ち入りをご遠慮いただけますか?」


 どこへ行っても言われた。


 もうどうしようもなくて、藁にも縋る思いで天王寺駅のコインロッカーに向かった。


 何でも、寺社仏閣で断られた怪事でもなんとかしてくれる拝み屋がいると。


 壊れたコインロッカーに依頼内を入れると、翌日返事があるらしい。


 そして、返事は――――――。


 返事を取りに行ったのは母親の方だった。

 彼女の手は震え涙が滝のようにあふれた。

 嬉し涙ではない。

 絶望だ。


“元の息子には戻らん。

 しかし、

 ようにする方法はある。

 どうするか、3日待つ間に返事を書け。”


 どうして……こうなったのか。



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