第6話 天狗の坊っちゃん恋をする2

 盛大に顔をしかめたマツリ。

 それを見て楓も我慢の限界を迎えた。


「某はっ!! こうして恥を忍んで、純情を打ち明けておるのだっ!!! 如何様にしてそのような渋面であられるのか!!??」


 ………………。

 どこから突っ込んでいいのやら――――。


「……。一応聞くけど、相手の女と面識あんの?」


「その、遠くから見るだけで……娘の方は某に気付いておらんのだ。」


 そんな気ぃはしとったけど…………。


「おしゃべりしたことないけど、結婚しぃたいと。」


 世間知らずどころの話違う。

 レベ違も、レベ違。


 このマツリのドン引きクラスの呆れに、楓は戸惑った。


「何か障りがござるのか? 顔も知らずして嫁に入るなどままあることではないか?」


 さすが天狗。

 時代錯誤の桁がちごた。


「あんなぁ。現代日本では、お付き合いから始めて、相手から承諾もらって、ご両親にご挨拶にうかごうて、からの結婚。やで?」


「おつきあい?? それは如何様にしてするのだ?」


「相手に告って……あ、告白な。して、相手がOKしたら。」


「告白? 何を? 白洲しらすの場のように白状でもせよと??」


 アカン。話通じへん。


「ちゃうわアホンダラっ!! “好きです”言わな話進まんやろ!?」


 えぇかげん殴りたなってきた💢


「そっ……そのようなこと! 破廉恥ではないか!?」


 💢💢💢

 あーっ、もう、やってられん!


「今時3歳児でも言わんわっ!! とりあえず相手とおしゃべりしてから出直さんかい!! このカスが!!!」


 マツリは耐えかね背を向けたが、楓は必死に引き止めた。


「まっ、待たれよ!! そ某、女子を見初めたのは初めてのことなのじゃっ!!! 人の寿命は短い! 今思いを遂げねば、この先永く悔いながら生きることとなろう!! 今しか無いのだっ!!!」


「相手は?」


 マツリは心底嫌そうに訊ねた。


「引き受けてくれるのか!?」


 マツリはため息を吐きながらうなずいた。


 この真っ赤な童貞チェリーどうしてくれよう……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る