第7話 喪女OL、秋の奇跡
本田未来、
39歳、
女性、
独身、
年齢=彼氏いない歴。
謂わる喪女ってやつです。
現在、派遣の事務員をやっておりまして、将来の先行きも考え、介護士の資格でも取って細々と老後に備えよかなって……。
なんかあれですね。
秋のほんのり冷たい空気も相まって。
人生灰色……みたいな
あはははー。
きっと今私は死んだ魚の目。
今日も残業帰り、スーパーの割引シール貼った弁当下げて帰宅。
すると、
「ああの。もし……。も、もし!」
「へ?」
振り返ると、スポーツ刈りにした、大学生?の青年。よく見ると引き締まったお顔の……。
「い、イケメン。」
わぁ!! いらんこと言うた!!
慌てて両手で口を塞いで弁明した。
「すみません! あ、あんまりかっこよかったから……。」
青年は、永瀬智也と関口メンディーを足して2で割った感じの、ワイルド系細マッチョ。
かカッコいい! 拝みたい!
声かけられただけで嬉しい!
「かっこいい……。それは見目麗しいと!?」
みめ? 見目!
え? 武士言葉?
え……どうしようかっこいい。
「え、えぇ。そうです……ね。で、あの……ご要件は?」
すると、青年は緊張しているのか、唇をぐっと真一文字に引き結んだ。少し震えている。
「そ……そのぉ。そ某とぉ、お付き合いをしていただけぬであろうかっ!?」
勢いと言い、声量と言い、煉獄さんみたい。
一瞬、髪型が黄色と赤の長髪に見えた。
ちょっとびっくりしたけど、
全然知らない人だけど、彼を見てると勇気出して言ったのがよく分かる。
だって、両手すっごい握りしめてるし、顔も耳まで赤くして……。
こんな私なんかに。
「……あの。私、もてなくて、美人じゃなくて、あのぉ……。」
何言ってんの私……。
あ……でも、ちょっと冷静になった。
釣りとちゃう? こんなカッコいい人。
本気で惚れたって言うん? ウソやろ?
あ ……コレ。アレや。
高校生とかがやる告白ゲームみたいな。
あぁ。もうイヤや。
惨めすぎて涙出そう。
未来は、涙を堪えていて精一杯強がって言った。
「そういう悪趣味な冗談止めてください!
顔がいいからって、何でも許されると思わんでよ!」
もう最悪!
未来は逃げるようにその場を離れようとしたが、
「あっ、まっ待たれよ!!その、しゃべり方が、その、いイケナカッタ……デス……カ?」
え? 何このカタコト。
「あぁ、それが……イヤ、ボボク ハ、えっと、ああの ……どう言えばっ、そのっ!本当に、本当に、好きですっ!!」
青年は破れかぶれで、小学生のように両手を握りしめ、目をグッとつぶり叫んだ。
こんな必死な告白があるだろうか?
周りからもイタイ目で見られてるっていうのに。
「はい。喜んで……。」
考えるより口が動いた。
四十路を前にした本田未来の奇跡である。
その現場の上で、アパート屋上からあぐらをかき、レモンイエローのパーカーを肩がけにしたブレザー姿のJKが
「青春か!」
と、甘すぎる海外製のお菓子を食べたようなゲロ顔で突っこんだ。
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