第15話 森の中で?

 鬱蒼とした森の中を私たちは進んでいた。まだ昼間なのに薄暗い。


 三人で相談して森の中を進むときは、先頭がティスでその後ろにタクと私が横に並ぶことにした。森に入る直前にMパッドを見ると地図上に緑の点が表示されそれが私たちの動きに追従して動いていることに気が付いた。予想はしていたが、地図のナビゲーション機能も搭載しているようだった。


「周囲の警戒は僕たちでするから、君はMパッドを時々確認しながら何か表示の様子が変わったりしたら教えてくれるかい? 僕たちが進んでいる様子が地図上に表示されているようだから、周囲に何かあればそれも表示されるかもしれない」

 タクはちらっとこちらを見ながら言った。


 しばらくは何もなく、私たちはお互いの世界のことについていくつか話をしながら森の中を進んだ。それらの話を総合すると、細かい点は異なるが基本的には私が居た世界とあまり変わりないようだった。昼も夜もあるし季節の変動もあるらしい。ただ、テクノロジーの発達状況は少し遅れているようだった。情報を伝達する手段があまりなく、電気はあるのに電話のような遠隔地と情報をやり取りするものが無いとのことだった。だから遠隔地の状況は自ら出向くか伝聞や文献のようなもので知るしかないようだった。まあ地球でも昔はそうだったはずだから特に驚きはなく、そういうものなのかという感想を持つだけだった。


(ピピピ……)


 突然Mパッドから音がしたので画面を見ると地図上に私たちの緑の点とは異なる赤い点が近くに表示された。私は無意識にピンチアウトしてよく見ると赤い点は二つあった。ここで初めて気が付いたのだが、緑の点は三つあった。


「人数分の点が表示されているということは、この赤い二つの点は何かが二つあるということだな。この辺りは特に何もなかったはずだが……」

 タクは赤い点が表示された方向を見ながら呟いた。


「僕が様子を見てこよう。兄さんはMとここに居てよ」

 ティスはそう言うと赤い点が表示された方向へ慎重に進んだ。


 赤い点が表示された方向は道からは外れる方向だが背の低い雑草がまばらに生えている広場のようになっているため見通しは悪くない。だがすぐに確認できる範囲には特に何も見えなかった。ティスも同じことを思ったのかこちらを振り返った。


「ティス、あの大岩の向こう側が怪しいと思う。少し大回りで回り込んで確認してきてくれないか? 遠くから確認して何かが見えたら近づかずに戻ってきてくれ。これを持って行くといい」

 タクは手招きしながらそう言うと双眼鏡のようなものをティスに渡した。


「わかった。ちょっと見てくるよ」

 再びティスは私たちから離れると、今度は大岩を回り込む方向へ歩いて行った。


「なんだと思う?」

 私はタクに尋ねた。


「わからないが、突然表示されたわけだから普通に考えたら建造物ではないだろう。ということは動物か……エネミーの可能性がある。この辺に居るエネミーはそれほど強いものではないはずだから心配はしていないが、一人で戦った場合は何があるかわからない。まして2匹となるとできれば今は戦いたくない。装備が十分じゃないからね。ティスもその辺のことはわかっているから、たとえそれほど強くないエネミーだったとしても偵察だけして戻ってくるよ。」

 タクは遠くに行ったティスを見つめながら答えた。


 赤い点の正体はもうすぐわかる……

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Mの世界 ― とある世界の冒険記録《プレイログ》 ― ちぇらぶぬこ @cherubnuko

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